早めに受診すべき「お尻の症状」―痔と大腸がんの見分け方と予防のための生活習慣
「お尻が痛い」「排便時に出血した」――そんな症状があっても、場所が場所だけに受診には二の足を踏みがちだ。しかし、想定される病気によってはすぐに受診したほうがよいものもある。それは、どのようなときだろうか。長年大腸・肛門病の領域に特化した医療を提供する松島病院(横浜市西区)の松島誠理事長に、どのような時に受診すべきか、そして「お尻の病気」を予防するための生活習慣などについて聞いた。
◇すぐに受診すべき症状は
お尻の病気で多いのが「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻(じろう)」、それに加えて大腸がんでも便に血が付着することがあるので、排便時に出血や痛みがある場合には、まずはこれらの病気を疑います。 そのなかで、早急に受診が必要と考えられるのは、排便時の痛みが軽度であっても日ごとに痛みが増すような場合や症状が2~3日以上続くようなときは、痔瘻もしくはその前段階の肛門周囲膿瘍(のうよう)が疑われるため、できるだけ早く切開し痔瘻の悪化を防ぐ必要があります。痔瘻とは「肛門の内側にある肛門陰窩(こうもんいんか)という窪みから細菌が侵入し、これにつながる肛門腺に感染を起こし、膿瘍(組織の中に膿<うみ>がたまった状態)を形成した後、これが破れて肛門内から外の皮膚側まで膿の通る管(トンネル)ができた状態」です。痔核や裂肛は数年かけて徐々に悪化していきますが、痔瘻の多くは数日単位の比較的短期間で進展、悪化します。痔瘻は自然に治癒することは少なく、多くは手術による治療が必要です。 便に血がついている場合、痔のほかに大腸がんも疑われます。裂肛などによる排便時の出血の多くは痛みが伴いますが、大腸にがんができても、がんそのものによる痛みはありません。「赤い血(鮮血)は肛門付近、黒っぽい(出血後時間が経過した)血は大腸などから出た血」といわれていますが、便器に落ちた血液は水で薄まってしまうこともあり、よほど黒くなければ一般の方は「赤い」と思いがちです。 排便時に少しでも出血があるのは異常と考えて、少なくとも黒っぽい血が1回でも出たらすぐに診察を受けるべきです。また、排便に特に問題がないのに、2度も3度も出血を繰り返すようであれば、やはり受診をおすすめします。