「母子家庭の私のほうが恵まれてると絶句」児童養護施設のクリスマス会の苦い思い出「当たり前の日常がない子たちにせめてご飯だけでもと」
生まれた直後に命を救われた経験から、「虐待に遭う子どもたちを助けたい」と里親を支える活動やこども食堂の運営をしている岩朝しのぶさん。忘れられない思い出を教えてくれました。(全4回中の4回) 【写真】「ここで無料で食べられる?」地域の飲食店が「こども食堂」に(全13枚)
■誘われた児童養護施設のクリスマス会で抱いた苦しい思い ── 自身も里親としてお子さんを育てながら里親を支える活動をなさっていますが、親の貧困や病気、虐待などさまざまな原因で親と暮らせない子について初めて知ったのはいつごろですか?
岩朝さん:中学校の登校区に児童養護施設があり、当時の同級生にも施設で暮らしている子がいました。その施設はキリスト系だったのですが、ある冬「すごく大きなクリスマス会をやるから遊びに来ない?」と誘われたんです。ところが、行ってみたら、テーブルには普通のお菓子がいくつか並んでいるくらいの、どちらかというと慎ましい会で。当時、母は離婚してシングルで私を育ててくれていたのですが、「これよりはうちのほうが豪華かもしれない…」と複雑な思いでいました。
そのとき、「私の部屋にも来てよ」と誘われたのが4畳半の部屋で、そこには2段ベッドが2台置いてありました。その友達は、「ここが私の部屋だよ」と、2段ベッドの上の段に案内してくれて。窓には鉄格子みたいな柵があって、勝手に屋外へ出られないようになっていました。当時、子どもだった私は「ここは子どもが暮らすところではない」と感じ取りながら、すごく胸が苦しくて…その感覚が今でもしっかり残っています。いろんな衝撃を受けて考えさせられた、中学生のクリスマスでした。
■子どもが食べたいときに食べたいものを ──里親を支える活動のなかで、2023年からは地域の見守りを必要とする親子が地域の飲食店に行って無料で食事ができる「ドコデモこども食堂」をスタートされました。こども食堂を始めるきっかけは何だったのでしょうか。 岩朝さん:児童養護施設でのクリスマスの苦い思い出がまず根底にあります。近年は、いわゆる「こども食堂」が増えつつありますが、たいていの場合、子ども側のニーズは関係なく、大人が開催できる日に開催しています。この状況にずっとモヤモヤを抱えてきました。