「母子家庭の私のほうが恵まれてると絶句」児童養護施設のクリスマス会の苦い思い出「当たり前の日常がない子たちにせめてご飯だけでもと」
「子どもが食べたいときに好きなメニューが食べられる、子ども中心の環境をつくれたらいいのに」と考えていたある日、「飲食店なら常にご飯があるじゃないか」と気づいたんです。地域に愛される飲食店もたくさんある。そういうお店なら、定休日以外は子どもはいつでも行くことができます。子どもが、親と学校以外で、地域の大人とつながる場所になるはず。そう思って「ドコデモこども食堂」を立ち上げました。 「ドコデモこども食堂」は、配布された無料クーポンで、提携している飲食店ならどこででも食べたいメニューを選んで食べることができます。
── 子どもが好きなときに好きな場所で食事をできるって、すごくいいですね。 岩朝さん:「ドコデモこども食堂」では、ひとつ決めごとがあって、それはテイクアウトNGなんです。ご家庭には必ずお店で食べるようにお願いしています。それは、家に食事を持ち帰ると、子どもが1人だけで食べるかもしれないし、家庭の中が見えにくくなって孤立につながるからです。 この前、ある「ドコデモこども食堂」のお店ですごく嬉しいことがあって。10代の子なんですけど、思春期というのもあって親とは一緒に行きたくないと言い、クーポンを持ってひとりでお店に通っていたんですね。その子は、お父さんが認知症、お母さんは精神疾患を抱えていて、家では孤独な状態で。
でも、お店に行くとすごくおしゃべりになる(笑)。そのときに「バイト始めたくて今、探してる」と話したら、お店のマスターが「うちにアルバイトに来なよ」って声をかけてくれて。その子は、いまそのお店でアルバイトをしているんですよ。 ── 通っていたお店でアルバイトなんて、とてもいいお話ですね。 岩朝さん:アルバイトとして働くようになるとお店でまかないの食事が出るから、その子は、「自分はもうクーポンは必要ないから、他の子にあげてください」とチケットの辞退を申し出てきて。来店した子どもに、「僕もそのチケットを使っていたんですよ」って店員として話し相手になってくれたりしながら、楽しそうにバイトを続けています。こんなつながりが地域と子どもの間に広がってほしいなあと思っています。