なぜ柔道伝統の100キロ超級で原沢は勝てなかったのか?井上康生監督も危機感抱く
原沢にも、その自覚はある。 「まだまだ地力、総合力が足りていない部分があると痛感した。あと一歩という試合が多い。そこをどれだけ詰められるかが、あと1年の課題」 もちろん「全体を通して動けていなかったのだが、その中でも我慢して戦えた。ツシシビリとのもつれた場面でも負けずに戦えた」という収穫もあった。 伝統の最重量級の戦いの前には絶対王者のリネールが立ち塞がる。 「絶対王者がいる。どうやってリネールに勝つか」 原沢も打倒リネールを最大テーマに掲げる。 奇しくも原沢を破って金メダリストとなった怪力のチェコ人もリネールの名前を出した。 「彼が出てない世界選手権で勝っても、すべてができたわけじゃない。彼を倒していないんだから世界王者ではない。来年の五輪の決勝で対戦できる日を楽しみにしている」 1964年の東京五輪では無差別級でアントン・ヘーシンク(オランダ)に神永昭夫が負けて「日本はお家芸で負けた」と批判にさらされた。以来、最終日に行われる最重量級は、日本にとって絶対に負けることのできない象徴的な階級となった。しかし、総合格闘家に転向した石井慧が、2008年の北京で金メダルを獲得して以来、2大会、金メダルを獲得できておらず、いずれもリネールが頂点に立っている。本番まであと1年……リネールへの挑戦権を得るべき大会で苦杯を舐めた原沢は、来年の日本武道館で奇跡を起こすことができるのだろうか。