なぜ柔道伝統の100キロ超級で原沢は勝てなかったのか?井上康生監督も危機感抱く
井上監督は、延長戦でのスタミナ切れを敗因に挙げた。 「決勝は惜しい敗戦。でも先に息があがってしまった。本当なら逆の形の展開にもっていかねばならなかった。理由?準決勝の戦い(の影響)もあった。休憩時間があったとはいえ、展開で(休憩が)短くなったことも影響しているかも」 確かに厳しい組み合わせだった。順調に決勝まで勝ち上がってきたが、昨年の金メダリストで世界ランキング1位のツシシビリ(24、ジョージア)との準決勝が最初の試練だった。初対戦となるツシシビリの激しい攻撃に耐える展開になった。だが、2分49秒に試合が動く。ツシシビリが、強引に投げを打つが、原沢が踏ん張って我慢比べ力比べとなった。最後は浮き腰で強引に押し倒して背中をつけた。そして、そのまま横四方に固めた。 しかし、このやるか、やられるかの勝負が落とし穴になった。 「準決勝が最大の山場だった。気持ちが上がったが意識しすぎた。それに勝って決勝も勢いで行けると思っていたが、そこが甘さだった」 ロンドン、リオ五輪の金メダリストで、世界選手権を8月連覇していた“怪物”テディ・リネール(フランス)が欠場していたことで、“プレ五輪”となった今大会は、2003年の棟田康幸以来、金メダルのない最重量級にタイトルを復活させる大きなチャンスだった。 しかし、あと1歩届かなかった。 井上監督は「準決勝まで我慢しながらの戦いの連続だった。競り合いを我慢してきた。いい圧力をかける場面もあった」と、評価しつつも、「決勝は本来なら競り勝たなければならない。新たな課題が見つかった。ここから(来年の五輪でも)厳しい戦いが待っている。収穫もあったが、新たな努力が必要。危機感を持った。重量級ではスピーディーな柔道が主流となっており、早い組み手、早い崩しの中で競り合うことへの準備が必要になってくる。ある程度の対策はできているが、まだまだもっとやっていかなくちゃいけない」と厳しいコメントを残した。金メダルと銀メダルの間にある課題の大きさを感じ取っていたのかもしれない。