五輪決勝Tで惨敗…なぜ”元世界一”なでしこジャパンはここまで弱くなったのか…再建に必要なのは監督解任とFW発掘と育成
メダルへの挑戦権すら手にできないまま、自国開催のヒノキ舞台に臨んだ日本女子代表「なでしこジャパン」の戦いがベスト8で終わりを告げた。 東京五輪8日目の30日に行われた女子サッカーの準々決勝。無観客の埼玉スタジアムで優勝候補の一角スウェーデン女子代表と対戦したなでしこは、前半23分にFW田中美南(INAC神戸レオネッサ)の2試合連続ゴールで一度は同点に追いつく粘りを見せたものの、後半に喫した2失点を取り返せないまま1-3で敗れ去った。 8月2日の準決勝はスウェーデンとオーストラリア女子代表が横浜国際総合競技場で、アメリカ女子代表とカナダ女子代表が県立カシマサッカースタジアムでそれぞれ激突。金メダルをかけた戦いは、いよいよクライマックスへと突入していく。
スウェーデンに完敗の高倉監督の采配に疑問
最終ラインの背後へ抜け出したFWスティナ・ブラックステニウスへ、オフサイドぎりぎりのタイミングでスルーパスを通される。左足で強烈な勝ち越しゴールを決められた後半8分の段階で、なでしこが勝利する確率は一気に下がったと言っていい。 高倉麻子監督が就任した2016年4月以降で、なでしこは一度も逆転勝利を収めていない。対戦時のFIFA女子ランキングで上位国に勝ったのも3試合だけ。最新のランキングで10位のなでしこに対してスウェーデンは5位。同23分にはPKでリードを広げられたなでしこは、データを覆せないままベスト8で東京五輪から姿を消した。 「非常に力のあるスウェーデンとの一発勝負で、自分たちの武器で戦う部分ではいい時間帯も作れたかなと思いますけど……(力が)及びませんでした」 終戦直後のフラッシュインタビュー。前回リオデジャネイロ五輪の銀メダリストで、今大会のグループリーグ初戦では44連勝中だったアメリカを3-0で一蹴。一気に優勝候補に名乗りをあげたスウェーデンに、攻守両面で屈したと高倉監督は認めた。 しかし、疑問も残る。なでしこは現時点で持てる力をすべて出し尽くしたのか、と。 最大で「5」ある交代枠を、追う側の高倉監督は使い切らないまま試合終了を迎えた。後半27分にMF三浦成美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)をMF遠藤純(日テレ)に、37分にMF長谷川唯(ACミラン)をDF北村菜々美(日テレ)に、41分にMF中島依美(神戸)をMF林穂之香(AIKフットボール)に代えただけだった。 日本女子代表の初代専任監督で、現在は解説者を務める鈴木良平氏は「交代させる選手の順番が違った点、リザーブに点を取りにいくための選手がいなかった点、交代そのものが遅すぎた点でちょっと残念だった」と高倉監督の采配に首を傾げる。 「スウェーデン戦を含めて、今大会の中島は本来の調子ではなかった。グループリーグで非常にいいプレーを見せていた林を、まずは中島に代えるべきではなかったのか。さらにリードを許している状況で、サイドバックの清水(梨紗=日テレ)とのコンビネーションで、右サイドから多くのチャンスを作り出していた長谷川を下げてしまった。途中出場したグループリーグのチリ戦で、非常にいい動きを見せていた木下(桃香=日テレ)がリザーブにも名を連ねていない。しかも負けているにもかかわらず、特に2人目と3人目を交代で入れた時間が遅すぎたと言わざるをえない」