なでしこJはなぜ英国に敗れグループリーグ敗退の危機に追い込まれたのか…モチベーターになれなかった指揮官
試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くまで、勝利どころかゴールを奪う予感すら無観客の札幌ドームのピッチからは伝わってこなかった。グループリーグ突破へ向けて、日本女子代表「なでしこジャパン」が崖っぷちに追い込まれた。 東京五輪の競技が本格的にスタートした24日に行われた、イギリス女子代表とのグループリーグ第2戦。1-1でかろうじて引き分けたカナダ女子代表との初戦から、先発メンバーを5人も入れ替えたなでしこは0-1で敗れ、グループEの3位に後退した状況で27日のチリ女子代表との最終戦(宮城スタジアム)へ臨むことになった。
エース岩渕は怪我でスタメン出場できず
なでしこの絶対的なエースはベンチでキックオフを迎えた。カナダ戦の後半39分に起死回生の同点ゴールを決め、あわや黒星スタートの危機からチームを救ったFW岩渕真奈(アーセナル)は、イギリス戦では一転してリザーブに名を連ねた。 右ひざにテーピングが厳重に施されている姿から、先発フル出場したカナダ戦で何らかのアクシデントが発生したと見ていい。中2日という過密日程もあって十分に回復しなかったのか。試合後の高倉麻子監督は岩渕の状態に対して言葉を濁した。 「ちょっと万全というところではないんですけど、まあプレーできるので、また次へ向かってやっていきたい」 岩渕がFW田中美南(INAC神戸レオネッサ)に変わっただけではない。カナダ戦の先発からゴールキーパーが山下杏也加(神戸)、左サイドバックが宮川麻都(日テレ・東京ベレーザ)、ボランチが林穂之香(AIKフットボール)、左サイドハーフが杉田妃和(神戸)に入れ替わったなでしこは、前半をスコアレスで折り返した。 開始6分で先制されたカナダ戦のように、立ち上がりに不安定さが顔をのぞかせる場面はなかった。放ったシュートは8本とイギリスの倍を数えた。しかし、後半は一気にペースダウンし、イギリスに主導権を握られ続けた。日本女子代表の初代専任監督で現在は解説者を務める鈴木良平氏は、原因はハーフタイムにあると推察する。 「前半はやってやるという気持ちが前面に押し出され、アグレッシブに前からボールを奪いにいく連動性を含めて、ベクトルが前へ向けられたサッカーができていた。ただ、ハーフタイムがいい休養になるかといえば、逆にグタッとなってしまうケースが多い。疲れてはいるけれども、だからといってスタミナが切れたわけでもない。ハーフタイムを境に前半の勢いが失われがちになる試合は、決して珍しいケースではない」