対日政策は? 経歴は?「トランプ×バイデン」比較
アメリカ大統領選挙が11月3日に迫っています。共和党は現職のトランプ大統領、民主党はバイデン前副大統領が候補者で、最後の追い込みに奔走しています。 【図解】「激戦州」「郵便投票」「勝利宣言」米大統領選のキーワード 今回は新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中での選挙戦でもあり、いつもの大統領選挙とは異なる様相も呈しています。今後のアメリカ、ひいては世界の命運を握ると言っても過言ではない次の大統領を目指すトランプ、バイデン両氏の経歴や政策とは。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授が紐解きます。
◇ アメリカ大統領選挙を直前に迎え、共和党候補・トランプ大統領と民主党候補・バイデン前副大統領の略歴や、2人が主張している政策をまとめてみた。
●「オバマ否定」「反トランプ」
ジョー・バイデン氏は上院議員を36年間、オバマ政権の副大統領として8年間務めた経験がある。ワシントンの主ともいえ、エスタブリッシュメント(既得権層)中のエスタブリッシュメントだ。バイデン氏は弁護士出身。ただ「家族や親戚の中で初めて大学に進学した」と何度も発言しており、労働者の家庭で育ち、「普通のアメリカ人の心が分かる」とずっとアピールしてきた。 そのバイデン氏の最大の懸念は、健康問題かもしれない。バイデン氏は現在77歳で、11月20日には78歳になる。当選すれば、これまでで最高齢だった現職のトランプ氏(74歳)を抜き、史上最高齢で就任する大統領となる。
再選を狙うドナルド・トランプ大統領の場合、「ワシントンのアウトサイダー」として、よく言えば新風を、悪く言えば波乱を生み続けてきた。トランプ政権で支持者が最も評価するのは、この4年間、当初の公約を守ろうとし続けたことだ。さまざまな規制緩和や大型減税、TPP(環太平洋経済連携協定)離脱、パリ協定離脱から始まり、メキシコ国境の壁、USMCA(新NAFTA=北米自由貿易協定)締結、イラン核合意離脱、米朝首脳会談、エルサレムの首都承認問題、イスラエルとUAE国交正常化など、これらの政策は支持者(「小さな政府」志向層、キリスト教福音派、白人ブルーカラー層)への「利益還元」が大きなポイントだった。特に、3人の保守派判事を任命した連邦最高裁の人事は、同性婚や妊娠中絶など司法の判断を今後大きく変えていく可能性があり、福音派にとっては絶好のPRとなる。 いずれの政策もオバマ政権を否定し続けるものであった。共和党支持者と民主党支持者ではトランプ氏の評価をめぐって大きく見方が分かれるのは必然かもしれない。少なくとも今年初めまでは失業率の改善など経済成長が目覚ましく、民主党支持者には「富裕層の優遇より格差拡大を抑えた、より良い経済成長があるはずだ」と、このトランプ氏の経済面での大きな成果も否定する人が少なくなかった。党派的な政治的分極化の時代はトランプ氏以前から始まっているが、トランプ氏の4年間で一層進んだのは否定できないことだろう。 新型コロナウイルスの爆発的な感染が始まった4月ごろから、民主党支持者や一部無党派による「反トランプ」の勢いが一気に加速し出している。トランプ大統領のコロナ対応への彼らの不満が高まる中、5月末からの人種差別反対運動の盛り上がりも「反トランプ」の流れをさらに顕在化してきた。「トランプ氏は警察改革よりも“法と秩序”で運動を敵視している」というのが、その見方だ。 バイデン氏にはオバマケア(医療保険改革)の拡大や、銃規制強化、気候変動対策、さらにはトランプ氏支持を崩すための製造業育成策(「ビルド・バック・ベター」=より良い再建)など、さまざまな公約を打ち出している。このうち気候変動対策については、リベラル派から強い支持を受けている「グリーン・ニューディール」よりも穏当な「バイデンプラン」と名付けられたものがあるが、方向性としては同じであり、再生エネルギー技術に集中的な投資を行い、雇用創出と技術革新を狙っている。 外交では、トランプ外交が米国の孤立を招いているとし、国際的な同盟関係を素早く回復させ、世界各地で民主主義を支えるとバイデン氏は繰り返し主張してきた。パリ協定、WHO(世界保健機関)への復帰、欧州との関係改善なども明言している。 ただ、民主党支持者の中のリベラル派(左派)にとっては、いずれも「あいまい」とも言える「中道」の立場をバイデン氏は取っているようにみえる。「大企業優遇」との批判が根強いトランプ政権の巨額減税の見直しを訴えているものの、その舌鋒は予備選のライバルだったサンダース氏に比べるとかなり弱い。それもあって民主党支持者の中のリベラル派からはバイデン氏の評価は高いとはいえない。ただ上述の「反トランプ」の流れが目立っているため、これまでの世論調査でトランプ氏をリードしてきた。