「金融緩和見直しは当面考えられない」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文2)
来年の物価上昇率は下がっていく見通し
今回のような変動幅の拡大措置が1回あると、また市場が催促するのではないかという議論ですけども、そういう可能性がないというふうには言えませんが、他方で、それはあくまでも、いわば内外の物価とか、金融資本市場の動向によるものでありまして、欧米の物価上昇率は、米国の場合は明確にピークアウトしていますし、欧州の場合はまだピークアウトしてませんけれども、しかし、それぞれの政府や中央銀行の見通しでは、来年において物価上昇率は下がっていくという見通しになっておりますので、そういう状況の中で、他国の中央銀行の金融政策についてコメントするのは差し控えますけども、これまでのような調子でどんどん、すごい勢いで金利が上がっていくとか、そういうことはもうちょっと考えにくいと思いますので、いずれにせよ、市場が何か催促するっていうことはいつでもあるんですけども、そういう客観的な情勢があるかって言われると、そういう情勢はあまり考えられないというふうに思っております。
賃金動向の把握は難しいと思うが
記者:すいません、Market Newsの【イノウエ 00:35:11】と申します。ありがとうございます。賃金動向でお伺いしたいんですけども、先日、総裁は国会でも、大企業だけではなくて中小の正規のところを注目されてるということでしたけども、なかなか生産とか設備投資と違って、賃金動向に関しては把握するのが難しいと思うんですけども、その辺を今後、どのようなデータを見て、どれぐらいのタイミングで判断できるのかっていうのを1点お伺いできればと思います。 それともう1点。先日、日銀の役員の年収は0.4%で、行員のほうは0.2%のベアだったんですけども、日銀法の31条によると、社会一般の情勢に適合したものとすることが求められているといわれてるんですけど、相当、日銀で見て0.2%っていうのは現状の社会情勢、一般的なものに合っているのか、それをもし民間企業がそれを受け止めるとすると、そう賃金引き上げなくてもいいんじゃないかみたいな見方が出かねないかもしれませんけど、その辺をどうご覧になってるかをお伺いしたいんですけども。よろしくお願いします。 黒田:まず賃金の動向については、もちろんさまざまな統計がありますので、そういうものも十分参考にいたしますし、それから経団連にしても連合にしてもそれぞれ、例えば春闘の決定状況をずっとフォローして発表してますし、それから夏のボーナスも良かったんですけども、この冬のボーナスはかなり高い伸びになってますし、そういうものも十分注視しておりますので、さまざまな統計データは十分把握して、全体としての賃金の動向を見ていきたいと。 ただ、それ、賃金の伸び率だけで何か決まるわけではなくて、やはり需給ギャップとか予想物価上昇率とか、そういったものも含めて物価に影響しますので、そういうものも見ながら。ただ、その前に、非常に重要な論点が賃金上昇率であるっていうことはそのとおりだというふうに思います。 なお、日銀の職員、役員の給与・年俸につきましては、比較可能な金融機関や民間の賃金やボーナスの動向を踏まえてやっておりまして、特に何か先行して日銀が先に賃金、給与を上げていくということはその制度の趣旨に合いませんので、あくまでも民間の給与・賞与の状況を反映した形でやっていくということですので、何か先行きを示すようなインジケーターではないということはご理解いただきたいと思います。