「金融緩和見直しは当面考えられない」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文2)
世界的な景気減速に備えるためか
記者:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。来年の世界経済についてのさまざまな見通しというのを見てみますと、特に欧米の景気、かなり厳しい見方をしているところが多いと思います。こうした世界的な景気減速に備えるためにも、今回、日本銀行として、大きな波が来たときのために政策の余地を広げておこうというお考えもあるということなんでしょうか。 また、もう1点、いったん上限金利というのを上げてしまいますと、マーケット、次のまた変動幅の拡大みたいなものを催促するような形になりませんでしょうか。そしてYCCをやめるまで、これからマーケットのプレッシャーというのが続くのではないか、その可能性についての議論というのをなさったのかどうか、その辺りも教えていただけますでしょうか。 黒田:まず海外経済につきましては、確かに供給制約の影響は和らいでいるわけですけれども、グローバルのインフレ圧力、各国中央銀行の利上げが続いているほか、先ほど申し上げたように、中国では感染症の再拡大に伴い、下押し圧力が強まっているということで、回復ペースが世界経済、海外経済としては鈍化しているということは事実だと思います。 また、先行きにつきましても、ウクライナ情勢、あるいは中国における感染再拡大の影響、その他さまざまなリスクが、国や地域ごとにばらつきを伴いつつ影響してくるということになりますので、不確実性が高いということはそのとおりでありますけれども、先ほど来、申し上げているとおり、供給制約が和らぐ下で、それから、非常に多くの受注残を輸出セクターは抱えていましてですね。
来年度は2%を下回る可能性が高いと見ている
供給制約が和らぐ下で、その受注残をまさに消化していくっていうか、実施していくっていうこともありますので、世界経済の成長が減速しつつあるということは事実ですけども、それが今のところ日本の輸出や生産に非常に大きく影響して、成長率が下方に修正されるというような状況ではないというふうに考えている。 これはご承知のように、IMFの成長見通しでも、日本の来年、再来年の成長見通しというのは、G7の中で一番高い見通しになっているわけですが、これは1つにはコロナからの回復が、時期が遅れているので、今、回復しつつあるっていう面があるのはもちろんですけども、他方で、緩和的な金融環境が続いているということもあると思いますので、世界経済の不透明性っていうのはありますし、リスクがあるっていうことは事実なんですけども、そういうところの、十分注視していく必要はあると思いますし、先ほど申し上げたように、必要があればちゅうちょなく金融緩和を拡大するということも十分可能ですので、十分、海外経済の動向、その日本の経済や物価へ影響というのは注視していく必要があるということはそのとおりですけども、今のところ、メインシナリオとしては、比較的、潜在成長率を上回る成長が続き、その下で需給ギャップもマイナスからプラスになり、労働市場のタイトさもどんどん、さらに強くなり、賃金・物価へのプラスの影響が出てくるというふうに思っておりますが。 足元は確かに、今の輸入物価の上昇による影響がだんだん減衰していきますので、物価上昇率は来年度において下がっていくわけですけども、そのあと、好循環の効果もあって、物価上昇率は緩やかに反転していくとは思うんですけども、来年度自体としてはやはり、全体としては2%を下回る可能性が高いというふうに、今のところはみています。具体的な見通しは、来年1月の展望レポートにおいてお示しすることになるというふうに思っております。