「イールドカーブ・コントロールの運用を一部見直し」日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の20日午後、記者会見を行った。 ◇ ◇ 【動画】日銀、大規模金融緩和策を一部修正 黒田総裁が会見(2022年12月20日)
イールドカーブ・コントロール下での金融市場調節方針は現状維持
記者:幹事社の共同通信の柿元です。本日の会見時間はいつもどおり45分を予定しており、最大1時間で終了させていただければと思います。できる限り多くの方に質問していただくため、質問の数は絞り、内容もできる限り簡潔にお願いできればと思います。総裁にもご協力をお願いできましたらと思います。 では本日の金融政策決定会合の内容についてご説明をお願いします。 黒田:はい。本日の決定会合では長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について現状維持とすることを全員一致で決定しました。その上で緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、イールドカーブ・コントロールの運用について一部見直すことを併せて決定しました。 本年、春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まっており、わが国の市場もその影響を強く受けています。債券市場では各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で市場機能が低下しています。国債金利は社債や貸出等の金利の基準となるものですので、こうした状態が続けば企業の起債など、金融環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。本日の決定はこうした情勢を踏まえたものです。
金融緩和の持続性高めて、物価安定目標の実現目指す
具体的には国債買い入れ額を大幅に増やしつつ、長期金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度からプラスマイナス0.5%程度に拡大することとしました。また、10年物国債金利について0.5%の利回りでの指し値オペを明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施いたします。さらに、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、各年限において機動的に買い入れ額のさらなる増額や指し値オペを実施します。 また、資産買い入れについては、前回の方針を継続することを決定しましたが、このうち社債買い入れについては、買い入れ残高を調整する際、社債の発行環境に十分配慮して進めることとしました。 今回の措置により、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が企業金融などを通じて、より円滑に波及していくと考えています。この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、物価安定の目標の実現を目指していく考えです。 次に、経済・物価情勢について説明します。わが国の景気の現状については資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進む下で持ち直していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は回復ペースが鈍化しています。輸出や鉱工業生産は供給制約の影響が和らぐ下で、基調として増加しています。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっています。 こうした下で設備投資は緩やかに増加しています。雇用・所得環境は全体として緩やかに改善しています。個人消費は感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加してきます。金融環境については、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っていますが、全体として緩和した状態にあります。 先行きのわが国経済を展望しますと、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐ下で回復していくとみています。物価面では生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%台半ばとなっています。また、予想物価上昇率は上昇しています。先行きについては本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想しています。その後はマクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていく下で、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみています。