収益目的の「切り抜き動画」に違法性は?──2024年主要選挙とメディア #SNSの功罪
「もし切り抜き動画に何かしらの対策ができるとしたら、現実的なのはプラットフォーム側に要請することでしょう。選挙期間中の政治に関する動画に対して、YouTubeなどのプラットフォーマーで広告収入が発生しないようにしてもらう。そうすれば、収益化目的の人たちは切り抜きなどやらなくなるでしょう。ただ、制度として事業者に強制できるかというと、簡単ではないでしょう」 虚偽情報の拡散を防止したい趣旨であれば、公選法の改正もあり得ると安野さんは指摘する。公選法235条「虚偽事項の公表罪」の運用を厳格にする、条文を少し変えて切り抜き動画も取り締まりの対象にするなど。ただし、どこまでの実効性があるかはわからないという。 「日本の公選法は世界で最も強力な形式犯に関する処罰規定を有しています。選挙運動に対して、ここまでがんじがらめにしている国はありません。そこで、規制を強化するよりも、逆に既存のルールを緩和していくという考え方もあり得ます。例えば、テレビや新聞など大手メディアが支持政党を表明することは禁じられていますが、アメリカのようにそれを可能にする。政治的公平性はさまざまなチャンネルの全体で確保していくという考えです。既存のメディアに対しては規制だらけなのに対して、インターネットでの規制が非常に緩い、というアンバランスさが問題の一つのように思います。だとすれば、既存メディアへの規制を緩和してバランスを取るというのも方法の一つではないかと思います」 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している。 --- 「#SNSの功罪」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。SNS上での誹謗中傷が社会問題としてクローズアップされるようになっています。それに伴い、辛辣な投稿に対する対策や人々の意識も変わってきました。一方で、SNSの恩恵を受けている人たちも多くいます。私たちはどのようにSNSと付き合っていけばよいのでしょうか。さまざまな事例と共に考えます。