「崖っぷちに立ってもいい。でも、そこから一歩踏み外さないで」――俳優・安達祐実が波乱の人生を経てつかんだ幸せ
しかし、ブームはいつまでも続かない。山があれば緩やかに下降する時もある。 「分刻みで仕事していたのに、『今日、お昼ご飯食べる時間あるんだ』とか思うと不安になって。このままいったら仕事がなくなって死ぬしかないな、みたいな極端な思考回路でしたね。自分の存在価値イコール仕事だったので、何かを生み出さない自分は価値がないんじゃないか、ただ生きているだけじゃダメなんだと思っていました」 子役としての印象が鮮烈なあまり、10代半ばから長いトンネルに入った。 「大人になることを認められていない気がしていました。でも、実際の自分は体も気持ちも変わっていく。恋心を抱いたりする自分も出てきているのに、そうなっちゃいけないと思ったり。『子役は大成しないから、早く大人になることを望む』と書かれた記事などを見ることもあって、自分の気持ちも外からの見られ方も二つに分かれていた。私が悩んでいるのは事務所の人も知っていたと思うけれど、その人の人生はその人にしか分からないから、結局、解決していくのは自分だと思っていました」
実家で子どもとして暮らしているうちは大人の俳優になれないのではないかと思い、10代の終わりに一人暮らしをスタート。その後、24歳で結婚、翌年に女の子を出産する。 「結婚や出産は祝福されるものだと思い込んでいたけれど、周りの人からまっすぐ喜んでもらえるような雰囲気ではなく、悲しいなと思った覚えがあります。今、娘の姿を見ていると、本当によかった、幸せでしかないと思いますけど」 仕事への焦りや不安から、産後は2カ月で復帰した。しかし、思い通りにいかない日々が続いた。 「バラエティー番組に出させてもらった時、肩書は『女優』と出るけれど、女優の仕事はないし、面白いことも言えない。私って何なんだろうと。20代はもう本当に全然うまくいかないっていう感じでした」 事務所の人たちに、なぜ仕事が来ないのか正直に教えてほしいと尋ねたこともある。 「営業に行った時、先方になんて言われるのか、とか。見た目は実年齢よりも若く見られていたけれど、実際にはもう母親だった。そのチグハグさがあって、使う側もどういう役を与えればいいのか分からなかったのかもしれないですね」