「崖っぷちに立ってもいい。でも、そこから一歩踏み外さないで」――俳優・安達祐実が波乱の人生を経てつかんだ幸せ
27歳で離婚すると、生活の不安も重くのしかかった。 「仕事がうまくいってないのにシングルマザーになってしまったので、まさに火の車じゃないですけど、稼いだものを全部シッター代にするような流れができてしまって。娘と2人で野垂れ死にするかもしれないみたいな、そういう恐怖に襲われたこともありました。バイトしようかな、みたいな時期はありましたね」 次第に気力が失われ、ろくに食事もとらなくなっていた。 「死にたいとは思ってなかったですけど、消えかかっていたというか。子どものご飯しか用意しないで、自分の食べるものはどうでもよかった。ポテトチップスとかを食べてなんとなくカロリーが摂取できればいいくらいの感じで、生命力がなかった」
イメージを刷新 自分自身を表現して心が自由に
20代の終わりにさしかかった頃、転機を迎える。 「お世話になっていたメイクさんが、『20代がもう終わるし、今の自分をきちんと何かで残したほうがいいんじゃない?』と言ってくれて。写真家さんと作品撮りが始まりました。それまで“オフィシャルな自分”は見てもらってきたから、そうではなく、日常を撮ってもらうというコンセプトで」 後に夫となる写真家の桑島智輝と約2年半、撮影を続けた。 「最初に撮ってもらった写真を見た時に、これが私なんだなと思った。本当の私が写っている感じがしたんですよね。写真だと役を演じる必要もないし、大人ぶる必要も子どもぶる必要もなくて、私がそこに立って写ればそれでいい」
思えば、ずっと自分のイメージに悩まされてきた。 「中高生の頃は、自分がおしゃれをしても気持ち悪いだろうなと思っていて。男でも女でもない、みたいなところにはめ込まれている気がして、スカートをはくとかも、自分はやっちゃいけないような気がしていました」 2013年に写真集『私生活』『続・私生活』を刊行。同じ頃、ファッションやヘアメイクも刷新していく。 「それまでのイメージは保守的で、本当の自分はこういう感じじゃないのに、と思いながら生きてきたので、イメージを自分自身に近づけるという作業をしました。派手なものや奇抜なもの、心躍るようなファッションも好きで。『これが私です』というものを着てインスタグラムで発信し始めたら、受け入れてもらえた。好きな自分で人前に出られるようになって、すごく楽になりましたね」