「崖っぷちに立ってもいい。でも、そこから一歩踏み外さないで」――俳優・安達祐実が波乱の人生を経てつかんだ幸せ
自分自身を表現することで、心が自由になっていく。面白がってくれる人も増えて、徐々に仕事のオファーは増え、役の幅も広がっていった。当時の発信を見て声をかけ、以来、多くの仕事をともにするアートディレクターの千原徹也はこう語る。 「今の自然な感じは、一度地獄を見ているからだと思うんですよね。安達さんは一回、仕事がほとんどないという状態で、ちゃんと一個ずつに向き合えるというか、仕事する人のパーソナリティーも含めて関われるようになっていったと思うんです。2歳でデビューして、いろんなイメージがあると思いますが、どんな普通の人より普通の人って感じです」
桑島と再婚し、男の子を出産。暮らしを楽しめるように変わっていった。 「元夫が言うには、私は本当に空洞だったらしいんですよ。そこに水が与えられて、土の上に花が芽吹いて、人間味を取り戻した。幸せになったんでしょうね。ご飯の量が全然違うんですよ。おいしいものを食べる幸せも実感できるようになったし、仕事をしていない自分を認められるようになった。自分が俳優をやる意味も、存在意義を求めていたところから、『楽しいから』に変わりました」 俳優の自分を、日常が支えてくれてもいる。 「俳優として物語の中を生きているけど、子どもたちがいるから現実の世界につなぎ留めてもらえている。子どもの学校のことをやったり、ご飯を作ったり、朝起こしたり。やっと地に足をつけて生きている感じが実感できるのは、子どもたちのおかげだなと思っています」
崖っぷちに立ってもいい。でも、そこから一歩踏み外さないで
「子どもの頃から肌を酷使しているせいもあって、一時期、けっこうボロボロになってしまって。絶え間なくニキビができているような状態でした。やっと安定しましたね」 自分の悩みをきっかけの一つとして、2022年からコスメブランド「Upt」をプロデュースしている。コンセプトとして「化粧なんて、なんとなくでいい」と綴った。 「以前、プロデューサーの方から『肌をきれいに保っておくのも俳優の仕事の一つだ』と言われたんです。限界はあるけど、なるべくきれいには保ちたいなとは思っています。でも、朝起きたての顔を鏡で見てがっかりするのは日常茶飯事。きれいでいたい気持ちはありますが、自然でいいかなって。肌がきれいとか老けないとかそういうことよりも、その人の人生が滲み出た時に、本当の美しさが見えると思っています。どう生きるかを重視していますね」 どう生きてきたかが、俳優業にも反映されている。 「人生の中で溜め込んできた悲しさ、怒り、楽しさ、嬉しさが蓄積されていて。お芝居の時はそれを引っ張り出してきて、思う存分、表に出すという感じです」