急激に進む円安は止められない? 今さら聞けない為替のキホン【Q&A】
Q:では金融引き締めによって円安を止めるのは?
A:日銀が金融引き締めをすれば円高になるという声がありますが、個人的には疑問です。ECB(欧州中央銀行)による大幅利上げ方針のユーロですら1ドル(パリティ)を割り込む状況ですから、日銀がマイナス金利を撤回したり、長期金利の誘導目標を引き上げ・解除したりする程度で円安が止まるとは考えにくいです(ECBは7月に0.5%、9月に0.75%の利上げを実施済)。通貨価値を防衛する目的で利上げをするなら、FRBに勝るとも劣らない年間3~4%程度の幅が必要となるのではないでしょうか。賃金上昇率の鈍さなどデフレ的な色彩を残す日本においてそれは明らかに非現実的です。
Q:円安が止まるとしたらいつ、どんなきっかけ?
A:円安トレンドの反転はFRBの政策転換に依存すると考えられます。それが一時的ながら発したのは6月中旬から7月末にかけての米金利低下局面です。ドル円が131台(8月1日)まで下落したその背景には、FRBが2023年前半に利下げへ転じるとの見通しがあり、(当時を起点に)数カ月後にはFRBがハト派(金融引き締めに消極的)に傾斜していると自信を持つ投資家が多くいました。筆者もその一人でしたが、8月に入ってからデイリー・サンフランシスコ連銀総裁やカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁といったFRB高官が利下げ観測を一蹴し、8月26日にはパウエル議長がジャクソンホール講演でダメ押しの一撃を加えたことで2023年前半利下げ観測はほぼ完全に消失しました。それに伴いドル円が再び円安基調になった経緯があります。 7月と同様の展開が再び訪れるとしたら、それはFRBが「利上げ幅縮小」の理由を説明する時でしょう。現在の利上げ幅である0.75%を0.5%、そして0.25%へと縮小する際は「インフレが最悪期を脱出した」あるいは「景気への配慮が必要」などといった理由を挙げる必要があり、そうした政策態度の変化がドルの先高観を減じると思われます。具体的時期としては11月FOMCが想定されます(ここでは9月FOMCの利上げ幅が0.75%になると想定)。利上げ幅が縮小すると、市場参加者の視線は自ずと利上げの終着点に移行するでしょう。市場参加者の政策金利見通しが固まれば、ドルの先高観は薄れ、円安トレンドも一服すると考えられます。
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