景気後退懸念 米国株、利上げ観測の行方次第でもう一波乱も?
米景気に後退懸念がつきまとう中、米国株の復調はこのまま続くのか。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースはどうなるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【画像】円安阻止へ日銀は利上げするべきなのか?
経済指標の結果から再び景気後退懸念
最近は米国株が復調しつつありますが、8月15日に発表された米経済指標は、全滅とも言うべき散々な結果で景気後退懸念を惹起しました。速報性に優れ、市場参加者から一定程度の注目を浴びるNY連銀製造業景況指数は8月にマイナス31.3へと垂直的な落ち込みを示し、2009年前半以来の低水準となりました。2009年前半と言えば、リーマンショックの「生傷」が癒えていなかった時期にあたりますから、それだけ状況は深刻ということです。 指数を構成する内訳に目を向けると、生産(+25.3→▲24.1)と新規受注(+6.2→▲29.6)が双方とも著しく悪化したほか、雇用(+18.0→+7.4)も低下しました。その他では週平均労働時間(+4.3→▲13.1)と受注残(▲5.2→▲12.7)が低下し、総じて生産活動の落ち込みを示す結果でした。また6カ月先の予想を問う項目は雇用(+22.5→+30.0)が回復した反面、業況(▲6.2→+2.1)は低水準から抜け出せず、設備投資(+16.5→+12.7)も落ち込み、企業が慎重姿勢を強めている様子がうかがえました。 人手不足解消を含むサプライチェーンの修復については一定の進展がみられるものの、高インフレとFRBによる金融引き締めに直面して、需要そのものが落ち込み、生産活動は急激に鈍化している模様です。 この指標は振れが大きいため、単月の数値を過度に重視することは避けるべきですが、今後発表されるフィラデルフィア連銀調査やISM製造業景況指数といった景況指数も同様の落ち込みを示せば、いよいよ景気後退が現実味を帯びてきます。9月1日発表の8月ISM製造業景況指数が好不況の分かれ目となる50を割る可能性も否定できなくなってきました。