人気集める家事代行の最前線 食事作らない「罪悪感」は消えたのか #昭和98年
『このメニューの組み合わせだと満足度が下がる』とか『おいしいけど、原価が高い』とか、データ化しています。 献立だけではなく、調理も温度を自動制御できる機械に頼ったりしているので、“家庭料理”のようで、家庭の再現ではありません」
「PRの仕方も最近は合理性の訴求に変わってきました。 初期は『安心でおいしい』を前面に出していたんですが、今は『料理に使う時間を他に使えるなら合理的で、タイムパフォーマンスが高い』という形に変えています」
つくりおき.jpは、2022年11月、一度値上げをしている。 原材料高や輸送コストの上昇などが背景だった。 3食分・5食分コースともに、1156円/週の値上げを行ったが、利用者は減らなかったのだろうか。
「一時的に減ったんですが、過去の水準に戻りました。競合や他社と比較し、価格が妥当かどうかは調査しているので、価格には自信があります」。 同社のアンケートでも、「期待以上の品質で、労力節減のコスパが良い」など、価格に妥当性を感じていることがうかがえる回答が並んでいた。
「女性の負担が当たり前」そんな社会を変えられるか
前島CEOはこのサービスでどのような社会を実現したいのだろうか。 「女性の機会が損なわれている状況を変えたいと思ってこの事業を始めました」 「テクノロジーが発達して、個人の人権が尊重されるような社会になっても、女性が家事や育児の負担を抱えがちな状況は変わっていない。当たり前のように時間や機会を奪われている。 これを変えることは人生をかけるに値するテーマだと思っています」
「サービスを始めて、『平日の帰宅後のストレスが激減した』などの声はいただいていますが、まだまだ、社会を変えられたとは思っていない。 このサービスが響いていないような人の価値観を変えていかないとだめなのかなと思っています」
出来合いの総菜「恥ずかしい」時代もあった
「かつては、家庭での手作りの食事は愛情と直結していました」 こう語るのは、家族社会学を専門とする日本女子大学の永井暁子教授だ。永井教授によると、手作り=愛情の価値観が定着したのは1960年代半ば以降だという。 「夫は会社組織で働くようになり、専業主婦の女性が増えました。 スーパーなどの大型店舗ができ、『パート』という働き方が定着してくるのもこれ以降です」