人気集める家事代行の最前線 食事作らない「罪悪感」は消えたのか #昭和98年
「それまでの女性の働き方は内職や、家業の手伝いという形が多かったのですが、高度経済成長期後半以降になると、区切られた時間の求人に応募し、その時間のみ働くというライフスタイルがかなうようになりました。 その結果、家事の時間をしっかり確保できるようになり、手間ひまかけたご飯を妻が作るということが美徳、愛情であるという価値観が定着したと思います」
その結果、料理雑誌が隆盛し、家庭で和風・洋風・中華風といった多様で凝った料理を作ることにエネルギーが注がれることになった。 しかし、1995年頃から専業主婦世帯と共働き世帯の数が逆転。プロ級のレシピから、時短レシピへと需要は変化していく。 ただ、時短を追求する形に変わっても、食事の準備を「妻」が担う価値観については変わらなかった。
「スーパーのお総菜を買うという文化はありましたが、それはたくさんのおかずの中の1品を付け足す、という形が多かった。 やはり『手作りでない』ことを恥じる文化が根強かったためです」
しかし、女性の正規雇用が増えてくると次第に家事代行業者が増え始めたという。 「正規雇用の女性が増え、家事を頼む費用を払えるようになります。 高いけれど、家庭生活がスムーズにいくのならということで需要が増えました」
家事をしたい人としてほしい人をつなげるマッチングサービスも登場し、さらにハードルが下がった」 「2000年に介護保険制度が始まったことも後押ししました。 介護サービスは家の中に入らないといけないので、抵抗が薄らぐきっかけとなったといえるでしょう」
「そういった要因が重なり、『他人が作ったものは食べたくない』などの、家事の外注への強い拒否反応や罪悪感を持つ人は、幅広い年代でかなり減ったと思います」
料理・掃除など定番の家事以外も外注?
料理や掃除といった家事の「定番」以外の「代行」に挑戦するサービスも現れた。 パナソニックHDの100%子会社「Yohana」は、2022年9月に、家族向けのコンシェルジュサービスの提供を始めた。 同社が首都圏に住む子育て中の共働き夫婦600人にアンケート調査した結果、家事「以外」のくらしのタスクに費やしている時間は週に17時間以上あったという。