筋肉だけでなく関節や腱も鍛えよう、「ものすごく大きい」メリットと適切な方法とは
筋肉を伸ばす「エキセントリック運動」と姿勢保持の「アイソメトリック運動」
体を鍛えるというと、筋肉だけに注目しがちだ。だが、力強い動きの裏には、靱帯や腱、関節など、体の動きを支える結合組織というあまり目立たない存在がある。 ギャラリー:関節とも関連、加齢に伴う炎症を抑えるには 写真と画像6点 「バーベルを持ち上げるとき、ランニングをするとき、ゆっくりとヨガのポーズをとるとき。すべての動きには、そうした裏方が不可欠です」と、スポーツ理学療法士でパーソナルトレーナーのジェシカ・ウルキ氏は言う。氏は、米アカデミー・メドテック・ベンチャーズ社の臨床実装マネージャーも務める。 「靱帯や腱は結合組織の一種で、人体のさまざまな構造を支え、固定し、つなぎ合わせる重要な役割を担います」と、米ネバダ大学ラスベガス校の統合健康科学准教授のカイ・ユー・ホー氏は説明する。これらの結合組織が安定しないと、腱の炎症、腱や靱帯の断裂、関節の問題が生じるリスクがある。 「関節などの結合組織の健康に気を遣わなければならないのは、アスリートに限らず、万人に言えることです」と、ウルキ氏は言う。年齢を重ねるにつれ、腱の損傷や靱帯を傷める捻挫、慢性的な関節疾患のリスクは大幅に高まる。2023年10月に学術誌「International Journal of Molecular Sciences」に発表された研究によれば、成人の25%近くにそうした疾患があるという。 これらの結合組織がどう働き、かかるストレスにどう適応するのかを理解することは、結合組織の健康や強さを保つ鍵だ。以下で説明していこう。
筋肉とはどう違うのか
靱帯は、関節の骨と骨をつなぐ帯状の線維性組織だ。例えば、前十字靱帯(ACL)は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの脛骨(けいこつ)を膝関節でつないでいる。「靱帯には関節の安定性を保ち、関節が過剰に動くのを防ぐ役目があります」と、ホー氏は説明する。 一方、「動きを実際に生み出しているのは腱です」と、米パームビーチ整形外科診療所の整形外科であるジョン・ヒンソン氏は語る。筋肉を骨に結びつけているのが腱だ。例えば、アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨を結びつけている。筋肉の収縮で生じた力を腱が骨に伝えて、動きが可能になる。 筋肉と結合組織の大きな違いは、ストレスへの反応と回復力にある。「一般に、結合組織は、筋肉を鍛えるようには鍛えられません。時間をかけて密度や強さが高まり、ストレスに適応します」とホー氏は説明する。 例えば、腱はかかった力に応じて強化され、より大きな力に対応できるようになる。器具や自分の体重が生み出す抵抗を利用する「レジスタンストレーニング」は、コラーゲン量を増やして細胞組織を改善することができ、痛みを和らげ、腱を強くする。 だが、こうした適応プロセスは時間を要する。「血液が豊富に供給されて比較的早く回復・成長する筋肉とは違い、靱帯や腱には血管が少なく、回復に時間がかかります」と、ウルキ氏は説明する。 トレーニングの負荷を急激に増やしたり、ランニングのような反復運動をしたり、短期間に無理な運動をすると、靱帯や腱に負担をかけすぎてしまい、繰り返すけがにつながるリスクが大きい。 「徐々に体を運動に慣らしていくことが大切です」とヒンソン氏は言う。「新しいことを始めるとき、人はやる気満々で、すぐにひととおり全部やろうとします」 ヒンソン氏が勧めるのは、体系的なトレーニングプログラムだ。少しずつ進めて回復することに重点を置いて、結合組織や関節を鍛えていく。「きちんと管理されたトレーニングは、関節のけがを防ぐ上で非常に重要です」