筋肉だけでなく関節や腱も鍛えよう、「ものすごく大きい」メリットと適切な方法とは
関節や腱のためのエクササイズ
腱の強化には2種類のアプローチがある。「エキセントリック運動」と「アイソメトリック運動」だ。どちらも、普段のトレーニングにすでに取り入れられているかもしれない。 エキセントリック運動は、筋肉が伸びながら力を発揮する運動で、しゃがんで腰を落とす動きや、かかとを上げた状態から下ろすときのような動きをいう。 アイソメトリック運動とは、筋肉の長さを変えない運動のことだ。例えば、プランク(うつ伏せになり両肘を曲げて床につけ、腰を浮かせ、頭からかかとまで全身を真っすぐにキープする姿勢)やランジホールド(脚を前後に開き、腰を深く落とす姿勢)など、1つの姿勢を一定時間キープする運動を指す。 こうした姿勢を保っているときは、筋肉を刺激すると同時に、関節のアラインメント(配列)にも働きかけていて、その位置をキープできるよう腱も鍛えている、とウルキ氏は説明する。 厳密に言えば、靱帯や関節は腱とは違い、直接強化はできないが、周囲の筋肉を鍛え、適切な動きのパターンを習慣づけることで、靱帯や関節の健康を支えることは可能だとホー氏は付け加える。 ウルキ氏は、担当するアスリートのために、異なる目標を設定したトレーニング日程を組むことが多いという。筋肉や体力強化のための「高強度」の日と、アラインメントの調整やアイソメトリック・ホールド(筋肉に負荷をかけた姿勢を一定時間保つ)、可動性に重点を置く「低強度」の日を定める。 とはいえ、たいていの人は、関節に特化したトレーニングだけをする日を設ける時間的な余裕はない。そこで、これらの動きをいつもの筋力トレーニングの中に取り入れてみてはどうだろう。準備運動のときやトレーニングの最後にアイソメトリック・ホールドを数セット追加してみよう。 トレーニングの最中は、エキセントリック・フェーズ(筋肉を伸ばす局面)に注目してみよう。エクササイズの間は、ゆっくりした動きでコントロールを維持することで、適切なフォームを保つことができる。また、結合組織に過度に負担をかけるリスクを減らすため、ウエートを軽めにして反復の回数を増やす方法もある。 最後に、ウオーキングやサイクリング、ピラティス、水中運動、ヨガなど、体への負担の少ない運動を取り入れることをヒントン氏は勧める。 「関節が強くなり柔軟性が高まるような部位をケアして改善しておけば、将来得られるメリットはものすごく大きいでしょう。私のような整形外科医のお世話になることも、けがをすることも回避できるでしょうから」
文=Hannah Singleton/訳=夏村貴子