認知症とがん治療を両立させるために~「本人が決める」ために必要なこと
がんに罹患する方の半数近くを75歳以上の方が占めています。75歳というのは、日常生活に制限がなく過ごすことのできる期間、健康寿命とされる年齢です。 【前編はこちら】がんが認知症発見のきっかけになることも 個人差がありますので一律にとは言えませんが、おおよそ75歳を超えると、がんへの対応は、治療の効果と心身への負担のバランスを取りながら考えていくことが大事になります。 高齢の方ががん治療を選ぶ際に知っていただくと役立つ情報をまとめた一冊『75歳からのがん治療 「決める」ために知っておきたいこと』より、役立つ章をピックアップしてお届けします。 前編<がんが認知症発見のきっかけになることも。高齢者のがん治療と認知症の関係>
「認知症だからわからない」は誤解です
認知症と診断されている人、認知症が疑われている人は「理解も判断もできない」と思われがちですが、それは誤解です。 伝え方を工夫すれば、自分の病気や治療のこと、選択の結果起こるかもしれないことや生活への影響などは理解できます。「好き/嫌い」を表明できれば、患者さん本人が自分で「こうしたい」と意思を示し、選択することもできます。 医師と家族だけで話を進めるのではなく、本人の気持ちを確認しながら、判断していきましょう。
「本人が決める」ために必要なこと
「 認知症だから、本人は決められない」と思い込まず、「どうすれば本人の意向を尊重できるか」という視点で、コミュニケーションをとるようにします。 ■本人の思いをゆっくり聞く 認知機能が低下していると、考えをまとめるのに時間がかかります。あせるとさらに混乱しやすくなるため、周囲の人は時間をかけて本人の思いを聞いていくようにします。 ・「 早く決めて」と追い立てない ・「 何度も言ってるのに!」などと責め立てない ・ 選択肢を示すなら、重要なことから順番に提示 ■「わかりやすさ」を高める 医師から説明を受けるときは、家族も同席するとよいでしょう。本人は慣れない場所 で落ち着かず、医師の話に集中できないことがあります。 医師も家族も、次のようなことを心がけると、本人のわかりやすさが増します。 ・10 歳くらいの子どもでも理解できそうな言葉を使う ・話の内容を紙に書き、くり返し確認できるようにする ・図や写真なども活用する ■理解できている? 本心か? 話し合いの場では、ただ伝えるだけでなく「どうなると思う?」と本人に聞きましょう。 口で言っていることと態度が異なる、本人の言うことがコロコロ変わるなどという場合、本音を話しやすい相手と、遠慮してしまう相手で発言が変わっている可能性があります。「わかっていない」と決めつけず、くり返し確認していきましょう。 ※「全部まかせる」と言われたら 本人が「わからないから、まかせる」などという場合には、本人の生活への影響を具体的に示し、「こうなるけど、いい?」と確認していきましょう。