独占インタビュー「鈴鹿8耐、3連覇を達成したHRCファクトリーの真実:ストラテジー編」チーム監督が明かす勝利の鍵
+40秒のペナルティの真相
ここでチームは大きなミスを犯してしまった。給油中は、メカニック4名もライダーもマシンに触ることはできない。それが、給油リグが給油口から外される前に、リア担当がジャッキダウンしてしまったのだ(マシンに触ってしまった)。その結果、ペナルティだ。 「ハイ、という言葉に反応したんだと思います。そのハイは、給油マンからがら出た言葉ではなく、どこか他からのハイだったんです。巧君は、交代する前に(さすがに疲れていて)『ラップタイムが5秒遅くても大丈夫ですよね』みたいな話をしていて、メカニックたちはその話を聞いていて、『1秒でも早くしてあげたい』と思ったんでしょう」 「(約50秒と)リードが大きかったので落ち着いていけば良い、というような話はしていましたけど、やっぱりピットの1秒は大きいですから。給油完了を目視して確認しているかといえば、う~ん……ハイに反応しちゃうのではないでしょうか」 2024年からレギュレーションで給油口が、2口(給油とエア抜き)から1口に替わって1秒ぐらい時間がかかるようになったとはいえ、チームHRCだと24L満タンに4~5秒で、タイヤ交換などトータルでもピットストップは11~12秒しかかからない。 給油マンは、給油が終わると「ハイ』といって合図する。するとリア担当はジャッキダウンし、テールカウルをプッシュしてセルスタートを補助する。同時にフロント担当は、アッパーカウル右をつかんで自ら走りながらプッシュする(プルといった方がいいかもしれないが)。 ペナルティはストップ&ゴー+10秒(ライドスルー&ストップ)だった。発令されたのが午後7時19分。7時25分にゴールタイムに+40秒と切り替えられた。鈴鹿のピットレーンのライドスルーは29秒とされ、それに10秒ストップが加算だから+40秒でも良くて、実はこれは予め用意されていたレギュレーションだった。 「コントロールタワーに呼び出されて、抗議でもしようかと息巻いて行ったんですが、いきなり映像を見せられて、『ハイ分かりました』と書類にサインしました。ペナルティに関しては、決勝当日にわざわざ紙で回ってきた。選べたんです、ライドスルーかタイム加算かを」 松原監督は、タイム加算を選んだ。 「ライドスルーだと、インラップでライダーがシケインまでギリギリ頑張ったとしても、アウトラップがどうしても遅くなる。すると+40秒よりも遅くなる可能性があると考えました」
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