廃炉にロボットで貢献できるか――福島高専の挑戦と、若き学生たちの思い #知り続ける
陸上部を辞め、ロボット開発に打ち込む学生
機械システム工学科4年の関根正純さんも、廃炉学修がきっかけで原子力や廃炉に興味をもった一人だ。 「3年生のとき、青森県にある日本原燃の六ケ所再処理工場、北海道にあるJAEAの幌延深地層研究センター、茨城県東海村の原子力関連企業などを見学させてもらったのですが、『こんな研究をしているのか』と刺激を受けました」 廃炉ロボットの開発現場も目にし、自分でも作ってみたいと思った。2020年、それまで打ち込んでいた陸上部をやめ、ロボット技術研究会に入った。
その後、仲間とともに2021年12月の「第6回廃炉創造ロボコン」に向け、はじめてのロボット開発に取り組んだ。第6回の課題は、原子炉建屋内の高所にある壁の除染。ロボットに搭載されたカメラを頼りに壁まで移動し、壁に貼られた模造紙のなるべく広い範囲をペンで塗ったチームの勝ちという条件だった。 関根さんらが開発したのは、上部の機構が伸びて、ペンを水平や上下に動かして模造紙を塗っていくロボット。しかし、本番ではロボットが壁にたどり着く前にタイムオーバーとなった。
悔いの残る大会となったが、今春5年生になる関根さんは、卒業後に大学編入を考えている。結果は6月ごろに出るという。 「原発への反対意見があることは知っていますが、これからますます電力需要が高まります。日本に原発が必要だとすれば、(大学で)新しいタイプの原子炉の開発に関われたらと思います」
山梨から志願して来た女子学生
福島高専の学生の9割は福島県出身で、そのうち地元いわき市が7、8割を占める。機械システム工学科2年の塚田愛由希さんは、山梨県出身という異色の存在だ。家族と離れて寮生活を送っている。同校に入学したのは、廃炉について学びたかったからだ。 きっかけは、小学5年生のときに見たNHKスペシャル「原発メルトダウン 危機の88時間」。
「福島第一原発事故の直後、線量がどんどん上がる現場に残って対応する人たちがいたことを全然知らなくて、心を打たれたんです。福島のため、東日本のためと働く姿に。録画した番組を何十回も見ました」 6年生の夏休みの自由研究では、原発事故の経緯を時系列でまとめた。中学では関連する本を読んだり、アルコールの蒸発を利用して自然の放射線を可視化したりするなど、関心の幅を広げた。さらに8回も福島に足を運んだという。 「両親にお願いして連れて行ってもらいました。富岡町にあるリプルンふくしまや廃炉資料館を見学しました。一方、おいしいものもたくさん食べて、観光地を巡って、地元住民のやさしさに触れて、家族みんな福島が好きになったんです」 中学1年生のとき、楢葉町で開催された第2回廃炉創造ロボコンを実際に見て興味が深まった。福島高専のカリキュラムを調べると、廃炉に関する授業や研修があり、ロボットも学べることが分かった。進学したいことを両親に伝えると、快諾してくれた。 塚田さんはいずれ廃炉に関わる仕事に就きたいという。 「原発や廃炉についてはある程度知っているつもりなんですが、ロボットの知識は、ロボット技術研究会の先輩や同級生たちについていけません。まずは高専ロボコンで経験を積んで、廃炉創造ロボコンにチャレンジしたいですね。廃炉関係の仕事はいろいろありますが、何らかの形で貢献したいです」