廃炉にロボットで貢献できるか――福島高専の挑戦と、若き学生たちの思い #知り続ける
廃炉人材を育成する福島高専
福島第一原発の事故から間もなく11年になる。廃炉に向け、デブリの調査は少しずつ進んでいるものの、取り出しや処分の方法については先が見えない。この難題を解決すべく、廃炉人材の育成に取り組んでいるのが福島高専だ。
高専こと高等専門学校は国公私立合わせて全国に57校ある。多くは戦後の高度成長期に工学などの実践的な専門教育を提供することを目標に設置されてきた。中学校を卒業した人が通う5年制の学校で単位制。県内外の学生を募るために寮生活をする学生も多い。1962年に設立された福島高専(当時は平工業高等専門学校)も、機械系や電気系を中心に学生を世に送り出してきた。地元の福島第一原発(1971年運転開始)にも人材を供給してきたが、2011年3月11日の事故で状況は一変した。 いまだかつて誰も経験したことがない廃炉作業に、地元の高専として人材育成で貢献したい――。廃炉創造ロボコンへの参加もそんな取り組みの一つだった。
じゃじゃ馬のようなロボット
メヒカリの部品加工を担当した武田匠さん(機械システム工学科5年)は、「『よくもこんなにたくさん部品を作らせるな』と言いたくなるくらいでした」と鳥羽さんを見て笑う。 「車輪用の部品なんて、樹脂の削り出しで24個も作りました。工作機械の不調で思った精度がなかなか出せず、何度も削り直す必要がありました」 このチームの3人目、遠隔操縦するためのソフトウェアを開発した冨樫優太さん(電気電子システム工学科5年)は、メヒカリは当初「じゃじゃ馬」だったという。 「コントローラーで操縦したとおりに動いてくれなかったんです」 冨樫さんは、メヒカリに分不相応な技術を盛り込んだ。操縦を助けるため、ロボットの傾きや走行方向をCGでコンピューターの画面上に映し出す機能で、課題では要求されていないものだった。授業ではなく、書籍やネットで学んだ知識を生かしたという。
「ロボコンといえば、NHKなどが主催する『高専ロボコン(アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)』が有名ですが、課題のレベルは『廃炉創造ロボコン』のほうが高いんです」 それゆえ、低学年では「高専ロボコン」で経験を積み、高学年になって「廃炉創造ロボコン」にチャレンジする学生も多いという。