中国の電力不足はFRB利上げにつながる?
中国の電力不足の世界経済への影響が懸念されています。米国当局はどんな現状認識を持ち、今後どんな対応を取ることが考えられるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】日経平均が31年ぶり高値 背景にある要因は?
なぜ中国で電力不足が生じているのか?
半導体不足に続く供給制約要因として、中国の電力不足が問題視されています。背景には、(1)中国当局が環境規制に対する「本気度」を強めており、中国の総発電量の約3分の2を占める石炭火力発電所の稼働が抑制されていることがあります。また、(2)石炭不足によって、そもそも発電量が限られていることも要因です。 中国で使用される石炭の9割程度は自国で生産されていますが、中国での需要自体が巨大なので輸入が滞ったことで必要な供給量が満たされていません。最大の輸入元であるインドネシアについては、同国内の天候不順により出荷が遅れているほか、2番目の輸入元であったオーストラリアについては、外交上の理由により中国自ら同国からの石炭輸入を完全に停止しています。電力の供給不安は今回に限ったことではありませんが、中国の国内産業の生産活動が停滞を余儀なくされれば、世界経済に大きな影響を与えそうです。 各種報道によると、中国では広範な業種で工場の稼働率が低下している模様です。環境負荷の大きい鉄鋼、アルミニウム、セメント産業に深刻な影響が出ているほか、広東省や江蘇省等を中心に自動車やスマホ工場などでも稼働率が低下しているようです。現地に進出する日本企業も電力不足によってフル操業ができない状況にあると報告されており、影響が懸念されます。 中国の電力不足は、当然のことながら中国の景気減速を招きます。中国は製造業がGDP(国内総生産)の約4割を占める産業構造ですから、生産活動の抑制を通じて経済成長率を下押しします。また日本にとっては、中国からの輸入が滞ることで、生産活動に支障が出るなど直接的な悪影響が考えられます。