なぜ阪神は球団史上初の本拠地開幕3連敗を喫したのか…後手を踏んだ継投策と“新4番”佐藤輝明の好機ブレーキ
記録に残らない守備のミスもあった。 7回、塩見の右中間を襲う打球に近本と佐藤が同時にクロスするかのようにスライディングキャッチを試みて間を抜かれ、ランニングホームランを献上してしまったのである。 一昨年まで7年間阪神のコーチを務め、守備・走塁に詳しい評論家の高代延博氏は、「両方がスライディングキャッチを試みて後逸するなどあまり見たことがない。セオリーはセンターが優先。しかも近本の守備範囲を考えると、近本が早めに声を出して思い切って打球を追い、佐藤が後ろに回ってカバーに入らねばならないケースだった。捕れる、捕れない以前に、そういう基本をやっていなかったことが問題」と指摘した。 そもそも、開幕ローテーに青柳、ガンケルの2人を揃えることができなかったことが、最大の敗因ではあるが、小川、桐敷という2人の若い投手を勝たせるには、打線の援護が不可欠だった。それが2試合連続のゼロ行進。投打が負のスパイラルにはまりこんでいた。 ブレーキになったのは新4番の佐藤だ。 1回二死一塁の第一打席には高梨の変化球をライト線に引っ張りツーベースでチャンスを広げた。だが、3回、5回の得点機にヤクルトの高梨ー松本のバッテリーの配球がガラっと変わる。昨年59打席ノーヒットの屈辱を味わった際に苦しめられてきた“攻略パターン”を使われたのだ。インサイド、高めのストレートを見せ、外角、低めに変化球を落とすという“対の配球”である。 3回2死から中野、マルテの連打で作った一、三塁には、全5球すべてでインサイドを攻められた。初球は148キロ。佐藤は狙い打ったが、体の開きが早くファウルになった。カウント2ー1からインコースのストレートを振ったが、またしてもファウルである。追い込まれて最後はインハイのボールを打ち上げての三塁ファウルフライ。ボール半個分差し込まれていた。 四死球で、高梨が崩れかけた5回2死一、二塁では、今度は、一転、フォーク攻めである。高梨も苦しくコントロールが乱れ、フォークを軸にした配球の間に挟んだストレートが2球とも逆球となったが、佐藤はとらえきれずにファウル。カウント2-2から最後は外へと落ちるフォーク。インサイドを意識させられていた佐藤は、途中で片手を離してしまうほどの空振りをした。 巨人、楽天で参謀を務め、現在、新潟アルビレックス・ベースボールクラブ監督の橋上秀樹氏は、「オープン戦の佐藤はポイントを近くして重心を意識しスイングの後ろを小さくした分、ボールを長く見れて見極めができるようになった。三振が減って軽打もできるようになった。配球を読んでいるようにも見えた。だが、あくまでもオープン戦の厳しい攻めのない中での結果。公式戦に入ると、当然、厳しく内角を攻められるようになり配球も変わる。佐藤自身もフルスイングをしようとするだろうし、去年と同じような状態への揺れ戻しが起きる。そこでどれだけ対応ができるか。ただ意識して取り組んだものがトータルではプラスに働くとは見る」という見方をしていた。 確かに佐藤は抑えこまれたが、インサイドのストレートを狙って打ちにいき、空振りではなく、ファウルにする進歩は見られた。ストレートに差し込まれる点が課題だが、試合の中で微調整していくしかない。