なぜ阪神は“史上最悪”7点差を逆転されたのか…矢野監督の采配ミスと「カーブが通用しない」ケラーの“守護神失格”
阪神がヤクルトとの開幕戦(25日・京セラドーム大阪)で7点差をひっくり返されて8-10の痛恨の逆転負け。開幕戦での7点差以上の逆転負けは1982年に西武が日ハムとの開幕戦で味わって以来の屈辱となった。中継ぎ陣がリードを守ることができず、最後は8-7で9回に登板した守護神のカイル・ケラー(28)が山田哲人(29)に同点ソロ、さらにドミンゴ・サンタナ(29)に勝ち越しの2号2ランを許して大炎上。新勝利方程式で開幕戦をぶち壊し、昨季のセーブ王、ロベルト・スアレスが抜けたチームの弱点を開幕からさらけ出すことになった。
ケラーはすべてカーブを打たれる
悪夢の始まりは8回だった。 8-3で迎えたこの回から、矢野監督は、110球を投じていた藤浪に代えて齋藤をマウンドに送った。齋藤は一死から村上に四球を与え、サンタナに2ラン。8-5となり長岡にセンター前ヒットを打たれ、続くオスナを三振に打ち取ったところで岩崎にスイッチした。ストライクとボールがハッキリとし過ぎていた。だが、昨季41ホールドの岩崎が誤算だった。準備不足だったのか、最後のアウトひとつが取れない。濱田に逆方向へおっつけられ、プロ初安打となる内山、塩見に連続タイムリー。投球バランスも悪かった。ついに1点差に追い詰められたのである。 一昨年まで7年間、阪神でコーチを務めた高代延博氏は、この回の継投が人選ミスだと指摘した。 「齋藤は制球難が課題。5点差があり今後への布石の意味も込めて起用したのだろうが、絶対に負けることのできない開幕ゲームでの人選としては疑問だ。またキャンプから出遅れていた岩崎はオープン戦からまだキレが出ていない。後手後手の継投になった」 そして9回。3万5000人のファンで埋まった虎の準本拠地と言っていい京セラドーム大阪が悲鳴に包まれた。矢野監督がスアレスに代わる新守護神に指名したケラーが先頭の山田にカーブをレフトスタンドに運ばれ同点とされてしまったのだ。 続く村上にもカーブをセンター前に弾き返され、そして無死一塁から前の打席でホームランを放っているサンタナである。またカーブだった。強烈な打球がまたもやバックスクリーンを直撃。バウンドしてボールが戻ってきた。勝ち越しの2ランである。 ケラーの球種は基本的にストレートカーブの2種類しかない。日本対策にスライダ―を取得してきたそうだが、落ちるボールはない。オープン戦で2試合投げており、データはヤクルトに入っていたのだろう。昨季パイレーツでは、そのカーブの空振り率は34.7%もあったが、対応力に優れた日本の打者には通用しなかった。 高代氏は、こう分析した。 「山田の同点ホームランはカーブを狙ったわけではなくストレートを待っていて反応で打ったように見えた。サンタナの一発は前の2人の打席を見ていてカーブを狙ったのだろう。いわゆるハンガーカーブ。もっとも長打になりやすいボール。阪神には、かつてストレートとカーブだけで勝負して結果を残したピアース・ジョンソンというセットアッパーがいたが、彼のカーブと比べると、キレ、軌道、落差、腕の振りのすべてで劣る。特に長距離砲には、このカーブは危険なボール。では、他のボールがあるのかといえば、ストレートは150キロを超えてくるが、ウイニングショットまではいかず、落ちるボールもない。まだ来日したばかりで、これから調整が上がっていき、ストレートの威力もカーブのキレも増すのかもしれないが、現状は、クローザーとしては厳しいと判断せざるをえない」