新型コロナ「mRNAワクチン」生んだ2つの発見 30年来の研究がつながる
一朝一夕の開発ではなかったコロナ用「mRNAワクチン」
以上の2つの発見を合わせて、人工のmRNAのウリジンに化学的な修飾を施してシュードウリジンにすることで、体の免疫反応を引き起こしにくくなり、なおかつ目的のタンパク質をより効率的に作り出すことができるようになりました。 昨年来のコロナ禍で、これら重要な発見を経て開発されたのがmRNAワクチンです。この新型コロナワクチンが、感染症との戦いにおいて重要な“武器”であることは言うまでもありません。さらにmRNAはワクチン以外の医薬品への利用も盛んに研究がされており注目が集まっています。 RNAをはじめ、体の中で起きている複雑な生命現象はいまだに多くの謎に包まれています。その謎は研究者の手によって少しずつ解き明かされています。30年来の研究による生命現象に関する新しい発見が、今回のように重要なワクチンの開発につながることもあるのです。ノーベル賞を受賞する研究はどんな生命現象を明らかにしたのか。今年の受賞者発表も非常に楽しみです。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 竹下あすか(たけした・あすか) 山形県生まれ。専門は農業土木。現場におもむき土や水を採取し、農業用水中の放射性Csの動態を研究した。公務員としての仕事経験を経て、2020年4月より現職