ノーベル賞研究支えた「ショウジョウバエ」生理学・医学賞
2020年のノーベル賞が10月5日(日本時間)の「生理学・医学賞」を皮切りに「物理学賞」(6日)、「化学賞」(7日)と連日発表されます。2018年は本庶佑氏(生理学・医学賞)、2019年には吉野彰氏(化学賞)が受賞し、3年連続で日本の研究が受賞するか注目が集まっています。 【図解】「超一瞬」のレーザー光が照らすノーベル賞研究 物理学賞 120年の歴史を持つノーベル賞ですが、受賞につながった研究には、それぞれに欠かせない要素があります。3回連載でお伝えする第1回は「生理学・医学賞」。ノーベル賞研究においてショウジョウバエが果たした役割に迫ります。
研究に使われたさまざまな生物たち
私たちの体の仕組みを探る研究は、研究対象となる生物たちに支えられています。過去にノーベル賞を受賞した研究に注目してみても、その実験に使われた生物は多様です。例えば大隅良典博士の受賞で記憶に新しい「オートファジー」という細胞内における物質のリサイクルシステムは酵母から発見されました(2016年に生理学・医学賞受賞。以下、カッコ内年号は受賞年を示す)。また、山中伸弥先生が「iPS細胞をつくれるのでは?」と考えるに至った背景には、カエルを使ったクローン実験があります(2012年)。ほかにも大腸菌などの微生物、イカやウニなどの無脊椎動物、さらに忘れてはいけない植物など、実にさまざまな生物が研究対象となっています。 その中でも「ショウジョウバエ」というハエは5つのノーベル賞受賞研究の中に現れます。ショウジョウバエは生物学者にとっては長年の付き合いがある昆虫です。
突然変異のハエから遺伝子のありか証明
ショウジョウバエの実験動物としての地位が確固たるものになったのは、遺伝子のありかを探る研究が行われた時のことでした。遺伝子が染色体の中にあることを示したのもショウジョウバエの研究です。それは1900年代初頭、まだ遺伝子の物質的な正体などが明らかになっておらず、「親の特徴を子に伝えている何か」にようやく「遺伝子」という名前がつけられた頃のこと。