運動は週末だけでもOK、糖尿病や高血圧など260以上の病気のリスクを下げると判明
慢性腎臓病や認知症も、どんな運動をどれぐらいすればいい? 注意点も
忙しい1週間に運動する時間を組み込むのが大変だという人は、あなただけではない。だが2024年9月26日付けで医学誌「Circulation」に発表された最新の研究によれば、1週間の1日または2日に150分(2時間半)以上の運動を詰め込むいわゆる「週末戦士」には、150分以上の運動を週全体に分散させる人と同じくらいの健康効果があるという。どちらのグループも糖尿病、高血圧、精神疾患を含む200以上の病気のリスクが減っていたと判明した。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 「身体活動は多くの病気のリスクに影響を与えることが知られています」と、論文の最終著者であり、心臓電気生理学と循環器学を専門とする米マサチューセッツ総合病院のシャーン・クルシド氏は話す。 「週末戦士の活動が心血管疾患のリスクを下げることはわかっていましたが、慢性腎臓病から気分障害まで、あらゆる病気にかかりにくくなることが示されました」 また、2024年8月に医学誌「Nature Aging」発表された別の研究では、週末戦士の身体活動は認知症、パーキンソン病、脳卒中、うつ病といった脳に関わる病気のリスクを下げることがわかった。
「重要なのは運動のパターンではなく総量」
クルシド氏らの研究では、9万人近くのデータを分析し、規則的に中~高強度の運動をする人(運動を週全体に分散させる人)、週末戦士、運動しない人(中~高強度の運動が週に150分未満の人)の3つのカテゴリーに分けた。被験者の平均年齢は62歳で、56%が女性だ。1週間の身体活動を追跡するため、被験者はリストバンド型の加速度計またはセンサーを装着した。 運動しない人に比べると、規則的に運動する人は6年間にわたって200以上、週末戦士は260以上の疾患のリスクが低かった。なかでも、2型糖尿病の予防効果が最も高く、週末戦士は43%、規則的に運動する人は46%もリスクが低かった。 「週末戦士も規則的に運動する人と同様の健康効果があるように見えるため、最も重要なのは運動のパターンではなく総量なのかもしれません」とクルシド氏は述べている。 米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの臨床准教授ジム・リウ氏は、この研究結果は多くの人に当てはまる可能性が高いと考えている。 「これは素晴らしいことです。なぜなら、正直なところ、おそらく私たちの多くが週末戦士に当てはまるためです」とリウ氏は話す。「私自身もそうです。仕事から帰宅したら、やるべきことがたくさん待っています。小さな子どもがいるため、『30分だけ外で運動してくる』とは言えません」 身体活動の強度は「メッツ(METs)」という単位で表される。中強度の運動は3.0~5.9メッツで、ウオーキング、庭仕事、ゆったりとした水泳などが該当する。高強度の運動は6.0メッツ以上で、ランニング、雪かき、社交ダンスなどが当てはまる。 この研究結果は、身体活動はどのようなものでも有効で、ある程度の柔軟性も認められるという以前の研究結果を補強するものだと、米ネバダ大学ラスベガス校の准教授で、運動生理学を専門とするサラ・K・ローゼンクランツ氏は指摘する。 もし1週間を通して規則的に中~高強度の運動をしていないとしても、週末に時間があれば、そのときにサイクリングやハイキングなど自分が楽しめることをすればいいとローゼンクランツ氏は述べている。 「覚えておいてほしいのは、一度にそれほど多くの運動は必要ないということです」とローゼンクランツ氏は話す。「たとえ数分間ずつでも中~高強度の運動をあちこちで行えば、効果は得られるはずです」 週に1日か2日でも運動する人は、気分障害のリスクも下がっていた。これも大きな利点の一つだ。 「私たちは今、誰もが直面するメンタルヘルスの問題について多くのことを耳にします。そして、可能であれば屋外で、すぐに何らかの身体活動を行えば、気分に大きな効果をもたらすという証拠がいくつもあります」とローゼンクランツ氏は話す。