“コロナ差別”乗り越えるヒント ハンセン病訴訟弁護士に聞く
「差別はいけない」 でも自分事になると……
――ハンセン病で続いた差別とは、どのようなものでしょうか。また、それらはまだなくなっていないのでしょうか。 ハンセン病は、社会の側が、患者だけでなく家族まで地域から排除したことに特徴があります。患者と家族は村八分にされ、多くの人が一家離散となりました。患者の子どもたちが学校に通うことに反対する、大規模な住民運動も起こりました。そして結婚を考える全員が、自分の家族に元患者がいることを告げるかどうかという問題に直面します。打ち明けた人のほとんどは結婚話が途絶えました。言わずに結婚した場合は、いつかは秘密が見つかってしまうのではと恐れ続ける、耐え難い人生を生きるわけです。 これらは過去の話ではなく、現実には最近でも起こっています。(2016年に始まった)家族訴訟に参加したことがきっかけで、元患者の家族であることが分かり、妻と離婚した原告がいました。小さい子が2人いる30代の方で、「隠していてごめんなさい」と土下座をして謝りに行ったけれど、ずらっと並んだ先方の親族に「二度と来るな」と追い返されたそうです。 一度自分の周りにハンセン病の問題が具体化すると、社会はまだそういう反応をします。 「差別はいけない」と言う人でも、自分の子どもの結婚相手の親が元患者だったと分かったら、かなりの人たちが態度を豹変(ひょうへん)させるのではないでしょうか。 ――それは、コロナウイルスの問題にもつながるところがあるように感じます。 あると思います。例えば、「感染した患者さんをあなたは差別しますか?」と聞けばほとんどの人はきれいに答えるでしょう。だけど、自分の子が通う保育園に患者だった人の子がいることが分かったときには、別問題になってしまう。だから、共にコロナと向き合っている患者を支えようという状況をつくるのが、解消の第一歩だと思っています。こうしたメッセージを伝えるのは、国などもそうですが、やはりマスコミの役割が大きいでしょう。また、いろんな支援組織や市民運動が広がることにも期待したいです。