“コロナ差別”乗り越えるヒント ハンセン病訴訟弁護士に聞く
感染症と向き合うときのヒント
――感染症に向き合う私たちが知っておくべき、ハンセン病の教訓とは何なのでしょうか。 感染力の強くないハンセン病を「恐ろしい伝染病である」と言いはやし、患者の人権を制限して療養所のような隔離された場所でしか生活できなくすることが、国民を守るためだとして容認される社会構造を国がつくってしまったことです。現在の日本では、こうした教訓などを経て「隔離」という言葉を基本的には使わず、感染症予防法の中では感染対策を徹底した医療機関の中で治療するという意味で「入院」と言います。ハンセン病とは感染力などの違いがあるので、必ずしも全てコロナに共通する教訓ということではありません。ただ、皆さんには過去に学んで、感染症が広がると一番つらい思いをする人たちが誰なのかということを考えてほしいです。自分もいずれ患者になるかもしれないし、何より皆一緒にこの社会をつくる一員なのだからわたしたちは互いに支え合うべきです。 また、感染力が強いコロナの場合はハンセン病以上に、物理的な隔離が人々に受け入れられやすくなる危険があります。医療における感染防止対策には多大な費用がかかりますしね。日本の医療機関は大変な思いをしながらも何とか入院治療をやれています。一方で世界に目を向けると、経済的に厳しい国では患者を完全に地域から排除して、言わば患者の見殺しのような事態が起こるのではないかと危惧しています。だから、いまこそ日本のハンセン病の教訓を世界に発信していく必要があると思っているのです。 (取材・執筆:下澤悠)