アパルトヘイト撤廃の今でも残る差別の意識 子供に影響を与える大人の偏見
※この記事はフォトジャーナル<世界の学校事情>- 高橋邦典 第48回」の一部を抜粋したものです。連載の性質上、当初、南アフリカが舞台であると分かりにくい内容だったので文章を追記しています。 ◇ アパルトヘイトが廃止された南アフリカの学校では、その後、白人と黒人が肩を並べて学ぶ光景が見られるようになった。首都ヨハネスブルグ郊外にあるサクソンウォルド小学校でも人種の比率は逆転し、黒人が7割で残りが白人とインド人になった。ちなみにインド人はアパルトヘイト時代、「白人より劣るが、黒人より上」に位置付けられていた。 白人生徒が減ったのは、黒人との共学を好まない親たちが、次々と学費の高い私立の学校へ子供達を転校させたからだ。多くの黒人家庭は白人に比べまだまだ貧しいから、金のかかる私立校は必然的に白人生徒ばかりになる。せっかくアパルトヘイトが撤廃されても、凝り固まったこんな差別意識を変えることは難しい。 僕にも幼い娘がいるのでよくわかるが、もともと子供たちは、肌の色の「違い」は認識しても、それによる差別心など持ち合わせてはいない。差別の意識を子供に植え付けているのは、我々大人の偏見に他ならない。大人が差別の連鎖を続けていく限り、社会が変わることはない。アパルトヘイトの子供達はその呪縛から逃れることができないのだ。 2002年8月撮影 (写真・文:高橋邦典)