「子どもと向き合う時間が絶対に必要だと思った」――セクシーさを封印して、よきお父ちゃんに 高橋克典の年齢の重ね方
会場の雰囲気に合わせて正装で決めてはいるが、指揮者との掛け合いを楽しんだり、ゲスト奏者に話題を振って人柄を引き出したりする。 「お客さんの代表として、聴衆とアーティストのつなぎ役をする感覚ですね。一流のプレーヤーの方に自分なりの好奇心でいろんなことを質問したり、演奏についてコメントしたりすると、また音楽と近づける」 インタビューの終わり際、この機会に伝えたいことがあると、高橋さんのほうから呼び止められた。 「やっぱり僕らは、俳優だからこそできることがあると信じているんです。それはたぶん、気分を作ることかもしれません。例えば、朝ドラのときは、絶対的にやさしいお父ちゃんでいようと思っていました。去年は経済がなかなかよくならず、戦争まで始まってしまった。心がぎゅっとなることばかり続いていました。だからこそ、思い切りやさしく、朗らかに、笑いかける人でいようと思ったんです。見ている人たちに、『あの時期は苦しかったけど、あのドラマがあってよかったね』と思ってもらえたら。そういうことを心に置きながら仕事をしている気がします。これからも、年齢を含め、今の自分を受け入れて、立派じゃなくても、みなさんの心とつながれるような俳優になれたら、と思っています」 ------- たかはし・かつのり/1964年生まれ、神奈川県出身。1993年に歌手デビュー。同年、ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」に出演。近年の出演作品は、ドラマ「舞いあがれ!」「ひきこもり先生」「罠の戦争」など。クラシック音楽番組「ららら♪クラシック」(2021年まで)やトーク番組「ワタシが日本に住む理由」などで司会者としても活躍。2023年度は、日本フィルハーモニー交響楽団とサントリーホールが主催する平日午後のクラシックコンサート「にじクラ」のナビゲーターを務める。