「子どもと向き合う時間が絶対に必要だと思った」――セクシーさを封印して、よきお父ちゃんに 高橋克典の年齢の重ね方
息子の反抗期に安心する部分も
素顔の高橋さんは、朝ドラの役どころと同じ「家族を大事にするやさしいお父ちゃん」である。息子との日常をブログに綴る。 「コロナもあったしずっと家にいて、家族と犬の話ばっかりブログに載せていると、『犬と子ども以外、何が好きなの?』みたいなことを言う人もいるんですよ。昔の魅力がなくなった、みたいな。でも、人としても役者としてもどちらかに向かって変化する。だからいいわけで。あの役(浩太役)が頭に入っているから、家族やまわりの人たちを大切にすること以外の欲や虚飾は必要ないと思っていた時期。役づくりを通して自分を見つめ直してみても、僕は絶対に間違っていないという確信がありました」 2004年に結婚。2009年に長男が誕生したとき、3カ月の育休をとった。 「子どもと向き合う時間が絶対に必要だと思ったんです。人間としても、役者としても。『(仕事から)子どもに逃げているだけ』と言う人もいましたけど、僕はそうじゃないと思った。放っておいたら死んでしまう命とどう関わって育てていくかということが、とても大事だと思ったんですよね」 「おっぱいをあげる以外は全部やった」というぐらい、一生懸命子育てをした。 「子どもをもつ親の気持ちは、僕の場合は、実際にもってみないとわからなかった」
高橋さんの両親は、二人とも音楽教師だった。母親は声楽家で、青山学院女子短期大学の名誉教授まで務めた。父親は、戦地から戻って国語教師になり、のちに音楽大学に入り直して、高校の音楽教師になった。作曲家・指揮者として、演奏活動にも身を捧げた。 「父親は、家庭にはほとんど関心のない人のようでした。僕に、生きていくうえでのヒントみたいなものをくれたことはほとんどありませんでした。印象に残っているのは、『太陽の下を歩ける人間でいろ』と、『偉くなんてならなくていいんだよ』という言葉」 「自分に息子が生まれたとき、一生懸命父親になろうとしましたが、父親ってどういうものなのかがわからない。モデルがない。『父親とはこうあるべきなんじゃないか』という気持ちでやっていました。ものすごく愛情をもって向き合っているからこそ、ふと気づくと、『こうあるべき』が中心になってしまって、そうなるともう、役割でしか生きていない。ほんとうの僕じゃない。難しいですね」 「役割」はふつう縛られるものだが、縛られている自分を否定しない。むしろ、子どもが与えてくれる役割が「自分を成長させてくれていると感じる」と言う。 「今、子どもは中学生。自分の主張が強くなってきて、言うことを全然聞いてくれない時期です。ぶつかって頭にもくるけど、安心する部分もあるんですね。反抗期って『俺は俺だよ』と思うことだから。どこかで、こうやって自分の感覚で自分のやり方を見つけていくんだなって、うれしくもなる。反抗期は、親を解放してくれるためにあるんじゃないかと思うこともありますね」