中途採用の3割が経歴詐称? 「部長職10年」ではなく「アルバイトを転々」…それでも簡単に解雇できない企業の防衛策は
「全体の30%程度の割合で何らかの経歴詐称が判明する」 こう話すのは、調査会社「企業サービス」の吉本哲雄代表だ。 【映像】実際にあった衝撃の経歴詐称とは? この会社では企業からの依頼を受け、採用候補者が履歴書や面接でアピールした経歴や勤務状況などに偽りがないかを調査する「バックグラウンドチェック」を行っている。企業が候補者の同意を取ったうえで、就職差別や人権に関わらない範囲で、能力や資質などの整合性を調べるものだ。
吉本代表は、これまで様々なケースの「経歴詐称」を見てきたと語る。 「勤続10年で部長職だったという経歴の人を調べたところ、わずか3カ月で退職していた。また、辞めたのは最近ではなく9年前。現在までの約9年間はアルバイトを転々としていたという」 他にも、有名大学を卒業後、外資系のコンサルティング会社を二社経験したという経歴が、実際は高校を中退し職を転々としていたというケースもある。更には、円満退職だったという申告の職歴が、実際は解雇だったケースも。営業経験が豊富だったというのは申告通りだが、仕入先と癒着しキックバックを受け取っていたことが発覚したという。 実際に、採用候補者から経歴詐称されそうになった会社を取材した。 「とても悲しい出来事が起きました。いわゆる経歴詐称です」「バカにされたようで悔しい」
SNSで怒りをあらわにするのは、東京・大田区で機械設計を行う町工場「安久工機」の田中宙さんだ。発端は2023年、とある応募者からの申し込みだった。 「60代手前の応募者は、海外の技術系の大学を卒業し、日本の大手電気機械企業で開発のマネージャーを務め、その後海外の電気機械系の会社でもマネージャーを勤めたという経歴だった。このような経歴の人物が入社すれば、飛躍的に成長するだろうと思っていた」 しかし、喜びもつかの間… 「取得した特許や関わった特許が並べられていたが、特許の検索サービスで名称や応募者の名前を検索してみたところ、一つも該当しなかった。この時点で話を盛っているのか、完全に嘘なのか」(田中さん) さらに、現在所属しているという団体に問い合わせたところ、「そんな人物はいない」との回答があった。疑問を抱いた田中さんが「特許番号など詳細を教えて欲しい」と男性にメールを送ると、「別の会社のプロジェクトにジョインすることになったので、面接はキャンセルします」という一方的なメールが来たという。 田中さんも「だから何が本当で何が嘘か全く分からない状態」と途方に暮れる。 驚くことに、この人物は今も同じ地域で虚偽とみられる経歴をかたって職を探していることが同業者の話で判明した。 「嘘の経歴で大きな成果が出せると考えていたのか、ワケが分からなすぎてなんでそんなことをするんだろうという気味悪さも」(田中さん)