「本来なら泣いてはいけない立場」NHKの顔・桑子真帆の度胸と愛嬌、カメラの前でこぼれた涙
紅白歌合戦の総合司会を4度務めたNHKのアナウンサー、桑子真帆(35)。30周年を迎える報道番組のキャスターとして、2度目の春を迎える。膨大な情報を浴びながらもフラットでいるために、ネット上の反応にも傷つきながら向き合う。桑子にとっての「強さ」、そして「弱さ」とは何か。2月にはウクライナを訪れ、警報が鳴る戦時下の日常を目の当たりにした。インタビューで、ふいにこぼした涙の理由とは。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「桑子さんなら話したい」心をつかむ度胸と愛嬌
週に3日の生放送。放送時間よりもずいぶん前に現場入りしたNHKの桑子真帆は、「伝わること」に徹底してこだわっていた。 「この画像だと情報が分からない」「テロップを出すタイミングに気をつけて」 キャスターの仕事は、原稿を読むだけではない。彼女は映像の細部にもこだわり、スタッフと番組を作り上げる。 スタッフいわく、「桑子は仕事を断らない」。入社時の上司は、どんな仕事もにこやかに切り抜ける彼女の才能を「度胸と愛嬌」と評した。 「断るという選択肢がないというか(笑)。一緒に仕事をしたいと思っていただけるなんて、こんなにありがたいこと、ないじゃないですか。仕事はやってみないとわからない。それは、単純に好奇心という面もありますし、やれば必ず糧になります」 「桑子さんになら話したい」と言って番組に出演する人もいるという。 「そのテーマ、その人のことを必死に勉強して『問い』をぶつける。それに尽きると思っています。そういう気持ちにまで高めて臨むっていう」
『クローズアップ現代』のキャスターとなったのは1年前。社会問題からカルチャーまで、毎回異なるテーマと向き合う。 「私が大切にしているのは、取材してきたディレクターたちと話をすること。わからないことはとにかく質問して、率直に思ったことをぶつける時間が、私にとって最初の勝負の場です。その上で、必要な書籍を読んだり、過去の資料に目を通したり。放送までの限られた時間で、必死に準備をする日々です。」 時には「性暴力」など重いテーマと向き合うことがある。取材VTRを見て面食らい、気持ちを穏やかに保てないこともあった。怒濤(どとう)の情報に、流されたり、引きずられたりすることはないのだろうか。 「無理に切り替えようとはしていないんです。むしろ切り替えなくていいと思っています。放送が終わったらそのテーマが終わるわけではないし、自分の中にも残り続けるものです。そして放送を終えた瞬間、次のテーマが迫ってきます。日々を乗り切るために、翌日の準備をしたら、とにかくいっぱい寝る。晩酌の力を借りることもあります(笑)」