11歳小学生に「9521万円の支払い命令」…自転車事故の高額賠償金に対して備えておくべき理由
住まいやお金など家族を守るための完璧な防御法はあるか。仕事や職場の揉め事に遭遇したときの対処法とは。よもやのトラブルから身を守るために法律の知恵を味方につけよう。 ■小学生が自転車事故で大ケガを負わせてしまった 2008年、当時11歳で小学5年生だった男の子が自転車で帰宅途中、歩行中の62歳の女性と正面衝突した事故が発生しました。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負って意識が戻らず、裁判では加害者の小学生に約9521万円の支払い命令が出ました(神戸地裁、2013年7月4日判決)。 賠償金の内容は、逸失利益、将来の介護費、慰謝料等の合計です。自転車事故で大きなケガを負わせた場合には、特に逸失利益と、将来の介護費の割合が大きくなります。 逸失利益とは、被害者の体に後遺障害が残存し労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少のことをいいます。相手が働けなくなったり、減収したりした場合の金額を補償するものです。 将来の介護費とは、事故による大ケガで、介護が必要になった場合の介護費を指します。自宅介護ではなく、職業介護が必要なケースでは、さらに高額になる場合があります。 この事故の場合、被害者は専業主婦でしたが、逸失利益は月額23万6400円と認めるのが相当。労働能力喪失期間は平均余命年数の2分の1の範囲内である10年間。これらの計算をもとに、逸失利益は2190万4918円と算定されました。さらに将来の介護費は、日額8000円と平均余命までの期間から、3938万6420円と算定。ほか慰謝料や入院費など合わせて、支払額は約9521万円となったというわけです。 相手に後遺障害が残った場合は、就労可能年数の逸失利益と平均余命分の介護費を払うわけですから、言い方を変えれば、被害者が若いほど、逸失利益や将来の介護費の額は大きくなります。事故で被害者が死亡した場合は、将来の介護費は発生しません。