11歳小学生に「9521万円の支払い命令」…自転車事故の高額賠償金に対して備えておくべき理由
■自転車保険、交通ルールについて学んでおく 今回の事故のように、自転車事故でも被害者に脳損傷や脊髄損傷などの大ケガを負わせてしまうことはあります。突然の自転車事故で相手に大ケガをさせると、賠償金は相当な額になります。突然の支払い命令に備えるためにも、自転車保険を上手に活用しましょう。近年は、多くの自治体が加入義務や努力義務を定めています。 不慮の事故を起こさないためにも、自転車の交通ルールをおさらいしておきましょう。 本来、自転車は歩道ではなく車道を走るのが原則です。自転車は道路交通法では「軽車両」扱いです。車道の左側を走るなど、車と同じ交通ルールが適用されます。にもかかわらず、歩道を自転車で走ったり、右側通行したりする光景をよく見かけます。自転車で歩道を走ることが許されるのは、13歳未満の子どもと70歳以上の高齢者、身体の不自由な人、工事などで自転車の通路がふさがれて歩道に入るしか方法がないときだけです。 最近では広い歩道に自転車用レーンを設けている道もありますが、その場合は問題ありません。そうでない場合は道路交通法違反です。 ■ママチャリの前後に子どもを乗せていいのか また、自転車の前後に子どもを乗せて颯爽と走るママチャリをよく見かけます。猛スピードで走り過ぎていくことも珍しくありません。大人の自転車の二人乗りは禁止されているのに、前後に子どもを乗せて走ることはいいの? という声もありそうですが、条例で認められています。 自転車の前方に設置された幼児用座席は、1歳~4歳未満の幼児で体重が15kg以下、身長100cm以下が目安です。後方の幼児用座席は、1歳~小学生になるまでの年齢で体重は24kg以下、目安身長120cm以下です。これらの幼児用座席は、一般財団法人製品安全協会が定める自転車用幼児座席のSG基準により、安全基準が設けられています。 いずれにせよ、前後に子どもを乗せて走る場合は、全体の重量が100kgを超えることがあります。ゆっくりしたスピードであっても、人にぶつかれば大事故になる恐れがあり、とても危険です。 自転車は免許不要で気軽に乗れる乗り物ですが、ひとたび交通事故を起こせば惨事になり、相当の損害金額が発生します。その場合、誰も幸せにはなれませんので、交通ルールを守って安全運転を心がけることが大切です。子ども1人で運転させるときも、十分な注意喚起をするのが大切です。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月29日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 籔之内 寛(やぶのうち・ひろし) 弁護士 弁護士法人サリュ所属。埼玉県生まれ。中央大学法科大学院卒。これまでの交通事故解決件数は1500件以上のプロフェッショナル(2024年1月時点)。ほか消費者被害や不動産トラブルなど、幅広く相談に乗っている。 ----------
弁護士 籔之内 寛 構成=力武亜矢