「カーボンニュートラル=EV化」は正しいのか? 基礎から整理しておさらい
IPCCがわざわざ「疑う余地がない」というのは疑う声が後を絶たないからなのだが、その議論はここで簡単にできるものではないし、権威ある機関の公式発表なので、素人が手持ちの情報を並べてあれこれ言うものでもない。学者同士の議論に任せるべきだろう。 さて、要するに「地球は危機に瀕しており、その原因はCO2で、犯人は人間」という話が全ての前提だ。 じゃあどうするのか? ということでCO2を減らしましょうとつながっていくのだが、この辺りから少し話の流れが合理的でなくなっていく。グラフ「日本の部門別二酸化炭素排出量」(2019年度)を見れば、部門別で最も大きいのは「エネルギー転換部門」の39.1%で、これは要するに発電所から排出されるCO2だ。次が産業部門で25.2%。3番目が運輸部門で17.9%。
普通に考えれば、多いものから手を付けていくのが常識なのだが、なぜか議論は運輸部門の、さらに一部でしかない自家用車(運輸部門の半分程度)に集中し「ガソリン車を止めてEVに乗ろう」という世論が形成されてしまった。エネルギー転換部門を半減させれば、運輸部門を完全にゼロにするより大きな効果が得られるにも関わらず、だ。
日本が「化石賞」と名指しされる理由は乏しい
さすがにいくら何でもバランスが悪すぎるので、日本自動車工業会(自工会=JAMA)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が数回にわたって反対意見を述べている。何の問題もなく減らせるのであれば良いが、そうはならない。詳細は後述するが、あまりに極端なハードランディングを強行すれば、日本経済の屋台骨を揺るがしかねない問題につながるからだ。
もちろん、だからと言って、運輸部門が何もしなくて良いということではない。その努力がなされているかどうかが分かるのがJAMAから発表されているグラフで、2001年からのCO2削減量の各国比較を示したものだ。欧米各国はほとんどが増加または微減で、唯一英国だけがマイナス9%という中で、日本に関してはマイナス23%と突出した削減実績を上げている。これは日本が長年にわたって積み重ねて来た内燃機関の低燃費技術と、ハイブリッド車(HEV=Hybrid Electric Vehicle)の突出した普及によるものだ。こうした部分を指して「ガラパゴス」と揶揄(やゆ)されることが多いが、マイナス23%という成果を示したガラパゴスであれば、むしろ世界はそれに追随すべきなのではないか?