トヨタ2029 電動化を最適化する 寺師副社長インタビュー(2)
[映像]トヨタ寺師副社長インタビュー
トヨタ自動車が月面探査プロジェクトに乗り出す。その挑戦は、地上でのクルマ技術を月でも実現する「リアルとバーチャルの融合」だと、豊田章男社長の言葉を借りながら語るのは、副社長の寺師茂樹氏だ。電気自動車(EV)対応が遅れていると揶揄されることの多い同社だが、世界的な潮流である電動化という次世代戦略を、トヨタの技術トップはどう考えているのか。モータージャーナリストの池田直渡氏が余すところなく聞いた。全5回連載の2回目。 【画像】出し惜しまないトヨタとオールジャパン 寺師副社長インタビュー(3)
◇ トヨタは10年後に燃料電池のローバを月面で走らせる。その時、この地上では一体どんな技術が活用されているのだろうか? 「EV(電気自動車)に出遅れ」と批判され続けるトヨタは電動化時代をどう切り開いていくのだろうか? ここ数年、大手メディアでは「内燃機関終了→全面電気自動車化」という極めて実情に即さないイメージ論が花盛りだ。一方で、そういうイメージに依拠して先進イメージを高めようと目論む海外自動車メーカーもあり、数年後に数千万台のEVを販売する計画などが数社から発表されている。 言うのは勝手だが、市場で販売されたEVは、まだ累計ですら300万台に過ぎず、バックオーダーで納車が数年先などと言う現象が起きているのはテスラだけだ。国単位でみても自動車全体のシェアの1%に達している国は数えるほどで、EV全体の需要が旺盛とはお世辞にも言えない。
基本に立ち返れば、電動化とは、電気自動車化という意味ではなく、システムサイドから見れば、モーターを備えるかどうかを意味する。エンジンがモーターと協調するHV(ハイブリッド)やPHV(プラグインハイブリッド)、エンジン無しでバッテリーに貯めたエネルギーで走るEV、水素と酸素を化合させて発電した力で走行するFCV(燃料電池車)もある。 走行性能サイドから見れば、同じハイブリッドの中にも、モーターのみで走行できるプリウスに代表されるストロング・ハイブリッドがあり、モーターはエンジンのアシストとしてしか機能しないスズキ・ワゴンRなどのマイルド・ハイブリッドもある。エンジンに補機としてのモーターを加えるだけのマイルド・ハイブリッドはシステム価格が安く、莫大な台数を抱える新興国などへの普及を考えれば、環境への貢献は大きい。 つまり改善余地と台数を掛け算したものがリアルな環境貢献であり、性能が高い分、価格が高ければ台数が落ちる。改善余地が大きくなくても台数インパクトが大きければ環境に貢献できる。そこをメディアは伝えない。500万円オーバーの電気自動車を作ったところで台数インパクトが小さすぎるのだ こうした混沌とした電動化イメージの中で、まずはトヨタにとっての電動化とは何かについて聞いてみた。