パリ協定は無謀? グレタさん「怒りの演説」への真剣な回答
「あなたたちが議論しているのは金や経済成長というおとぎ話だけ」――。スウェーデンの少女、グレタ・トゥーンベリさんが世界中の大人たちに対して温暖化対策の加速を訴えた演説が、さまざまな反響を呼んでいます。 現在の温暖化対策をめぐる国際的枠組みには「パリ協定」があります。2016年に発効したこの協定は、米国や中国も参加したことから当時は歴史的合意と評価されました(その後、米国は離脱を表明)。一方で、モータージャーナリストの池田直渡氏は、パリ協定の目標は、政策に落とし込んで本気で実現を目指す場合には、地球上の「人間のあり方」を大転換する必要があるような無謀なゴール設定ではないかと指摘します。池田氏に寄稿してもらいました。
「私たちは大量絶滅の始まりにいる」
米ニューヨークで行われた国連気候行動サミットで、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんが行った「怒りの演説」が話題になっている。 すでにご存知の方は多いだろうが、一応文意を要約しておこう。 「あなたたちは私に希望を求めてここにきたのですか? よくもそんなことができますね! 30年以上にわたって、地球温暖化が進行していることを科学が示してきたにも関わらず、あなたたちは必要とされる政治や解決策を提示できませんでした。私たちは大量絶滅の始まりにいます。あなたたちは事態の緊急性を理解していると言いますが、行動を起こしていません。あなたたちは邪悪です。私たちや子どもの世代に何千億トンものCO2を押し付け、私たちを失望させているのです。若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。あなたたちが裏切りを選ぶのであれば、私たちは決して許しません」 さて、困った。「大量絶滅の始まりにいるのだから、解決のための行動を今すぐ取れ」という気持ちは分かるのだが、その温暖化ストップのためにやらなければならないことであれば、どのような結果であれ受け入れられるのだろうか? おそらくその対策がもたらすトレードオフは彼女の想像を上回るものだ。 彼女の“敵”である大人たちは、パリ協定が定めたあまりにも厳しすぎる目標を飲み込むことができずにいる。それに対して「意気地なし」とか「金の亡者」という理解をしているようだが、実はその程度の出血で済む治療ではないのだ。データを提示しながら説明していきたい。