ゴア米元副大統領が見つめる『不都合な真実』から「10年後の世界」
自らが主演したドキュメンタリー映画『不都合な真実』で、温暖化による地球の危機を訴え、ノーベル平和賞も受賞したアル・ゴア米元副大統領。映画は、本国アメリカのみならず世界的な反響を呼び、2007年アカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞と歌曲賞を受賞した。 【写真】パリ協定離脱「トランプショック」で日本の自動車メーカーが割を食う? 世界に衝撃を持って受けとめられた前作から10年。この秋に続編『不都合な真実2:放置された地球』が公開されることになった。今年6月にはトランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱を表明するなど、温暖化対策をめぐる取り組みはけっして順風満帆ではない。ゴア氏は現在の世界をどう見つめているのか。さらにその先の未来は――。ゴア氏に聞いた。
●根強い温暖化懐疑論
続編はゴア氏に対する数々の批判から始まる。溶け出していく氷河や氷床の映像をバックに「誇張だ」「センセーショナリズムだ」などの字幕が躍る。 ゴア氏の取り組みには政治の壁が立ちはだかってきた。アメリカでは、温暖化に対する懐疑論が根強くある。 2001年3月にはブッシュ政権が、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減目標を定める国際的な枠組み「京都議定書」(1997年採択)からの離脱を宣言した。米国経済への悪影響や中国やインドなど途上国の不参加とともに、CO2増加と温暖化との科学的な因果関係などへの疑問も背景に挙げられる。ブッシュ大統領は、ゴア氏が2000年の米大統領選において僅差で敗れた相手だった。 そして、今年6月には同じ共和党のトランプ政権が「パリ協定」(2015年採択)からの離脱を表明。トランプ大統領は「温暖化はでっち上げだ」と否定的な見方を示し、大統領選の最中から協定離脱をほのめかしていた。パリ協定は、世界の全ての国が温室効果ガスの削減への取り組みを約束したもので、CO2の世界二大排出国であるアメリカと中国も2016年9月に締結。インドも枠組みに加わるなど、先進国だけではなく途上国も削減目標を持つことになり、その歴史的意義は最大限に高まるはずだった。 進まない温暖化への理解と相次ぐ政治による温暖化対策の後退。劇中では、ゴア氏が打ちひしがれる姿も映し出されている。