「カーボンニュートラル=EV化」は正しいのか? 基礎から整理しておさらい
脱炭素社会の実現に向けた動きが、自動車業界にも波及しています。欧州連合(EU)や米国がガソリン車などの新車販売を将来的に禁止する方針を打ち出したのです。日本でも昨年秋に菅義偉前首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言。その後、政府は2035年までに新車販売で「電動車100%」を実現すると表明しました。 カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」こと。つまり、排出量から吸収量を差し引いた合計をゼロとすることを目指します。その実現のために内燃機関のクルマから電気自動車への転換を求める声が強まっていますが、それは妥当な方向性なのでしょうか。その前提はどういうものなのかをはじめ、モータージャーナリストの池田直渡氏に基本から解説してもらいました。
「CO2をどう減らすのか」の方向性への合理性
2021年の自動車業界を振り返ると、年間を通したキーワードは、おそらくカーボンニュートラルだったように思う。そしてカーボンニュートラルをめぐる世論はこの1年の間にかなり変化もした。 ベースにあるのは「気候変動」だ。「世界は異常気象による危機に瀕しており、このままだと人類は存続できなくなる。その原因はCO2にあるので、人類は多大な犠牲を払ってでも、CO2の排出を大幅に削減していかなくてはならない」といわれている。
誰が言っているかというと、「国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC=Intergovernmental Panel on Climate Change)」という団体であり、その団体では、各国政府を通じて推薦された科学者が、5~6年ごとに世界の科学者が発表する論文や観測・予測データを用いて、気候変動に関する評価報告書を作成している。 現時点での最新の報告書は、2014年に発表された第5次報告書で、報告書の趣旨をまとめると以下のようになる。(第6次報告書はすでに部分的に発表されているが、9月に正式な統合報告書が公表される予定) ・温暖化には疑う余地がない。 ・人間活動が及ぼす温暖化への影響は「可能性が極めて高い」(95%以上)