「地獄みたいだ」…2つの大地震が一度に襲って「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来
2024年1月1日、能登半島地震が発生した。大地震はいつ襲ってくるかわからないから恐ろしいということを多くの人が実感した出来事だった。昨年には南海トラフ「巨大地震注意」が発表され、大災害への危機感が増している。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
「大連動」という恐ろしい未来
娘・香織の安全を確認したタクシー運転手の浜田幸男は「なんで映画みたいなことが俺の生きているときに起きるんだよ。本当に地獄みたいだ」と怒りと悲しみに暮れていた。 日本経済を牽引してきた企業の多くは二つの大地震で中枢機能が低下し、海外法人は撤退。東西間の交通寸断に伴う機会損失も大きく、人々の消費マインドは一気に低下した。株価は下落を続け、金利変動に伴い資金調達を困難とした企業は債務残高が増大。日本の国際競争力は急降下し、雇用状況は悪化する一方だ。 さらに事態は悪化する。香織を襲った南海トラフ巨大地震の発生から約50日後、今度は静岡県と山梨県にまたがる日本最高峰の富士山が噴火した。噴火後2時間で東京にも降灰が始まり、交通や物流などがストップ。慌てた浜田がニュースを見ると、首都圏の約1250万人に呼吸器系の健康被害を生じるおそれがあると報じていた。 「おいおい、マジかよ」。火山灰は直接死傷する可能性はほとんどないものの、わずかでも堆積があれば交通機関は麻痺し、出勤はおろか移動することも困難になる。 2023年3月に関係自治体や国などでつくる「富士山火山防災対策協議会」がまとめた避難基本計画によれば、微塵でも降灰が始まると鉄道は早い段階で運行に支障が生じ、大部分が運行をストップ。その余波で道路交通量は激増することになるが、路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。 雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。 電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる。 首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の噴火。320年ほどの時を経て再び発生した3つの巨大災害が重なるという「大連動」に、もはや浜田は空を見上げるしかなかった。「なんてこった。ハリウッド映画でも見たことがない光景だ」。アパートの窓から見える降灰は、天からの涙のように映った。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)