<胃や腸の痛みで疑われる消化性潰瘍>2大リスク要因はピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬、実は課題の多い診断手法
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
NSAIDは、解熱や鎮痛を目的に使用される。また、このクラスに属するアスピリンは、既往歴に脳卒中や心筋梗塞などがある人に対して、再発を予防するために長期にわたって使用される重要な薬である。 2014年に発表された、英国のプライマリ・ケアの患者データベース(300万人超を含む)を利用して合併症のない消化性潰瘍発症への使用薬剤の影響を調べた研究によると、NSAIDの使用は消化性潰瘍になるリスクを高め、このクラスの薬を1種類服用している人では中程度の増加(オッズ比1.64)、複数種類の薬を服用している人では大きな増加(オッズ比3.82)があった。NSAIDの使用期間が長くなるにつれてリスクは増加した(使用が3年以上のオッズ比2.46に対し、3カ月未満のオッズ比は1.07)。 アスピリン使用による消化性潰瘍のリスク増加は、他のNSAIDで見られるものと同様であった(オッズ比1.54)が、アスピリンとクロピドグレルを使用した抗血小板薬2剤併用療法では、期間やアスピリンの用量に関係なく、リスクが大きくなった(オッズ比2.62)。 ここで「オッズ」とは、ある事象が起こる確率がその事象が起こらない確率の何倍であるかを示す数値であり、オッズが大きくなるほどその事象の「起こりやすさ」が増す。異なる群での事象の起こりやすさを比較するには、それぞれのオッズの比(「オッズ比」と呼ぶ)を用いる。 若干古いデータではあるが、02年に発表されたメタアナリシスでは、ピロリ菌感染とNSAIDの使用が同時に起こると、消化性潰瘍および出血性消化性潰瘍のリスクが相乗的に増加することが示された。ピロリ菌に感染していてNSAIDを使用していた人は、ピロリ菌感染もNSAID使用もしていなかった人に比べて消化性潰瘍を発症するリスクが61.1倍も高く、出血性消化性潰瘍のリスクは6.13倍増加した。 先日、薬剤師や登録販売者がいないコンビニエンスストアなどの店舗でも市販薬(一般用医薬品)を買えるようにするとの厚生労働省の方針が報道された。NSAIDも含まれる。法案が成立すれば1~3年後に導入される見通しだ。 現在でもインターネット通販でNSAIDを購入することはできるが、さらにコンビニなら夜間も手軽に入手できることになる。急な症状に対処するための利便性は増すが、同時に長期使用や大量使用によって消化性潰瘍を含めた副作用の増加が心配である。