西武の松坂大輔が引退試合で”魂の5球”に込めた思いとは?
西武の松坂大輔(41)が19日、メットライフドームで行われた日ハム戦に引退試合として先発、先頭打者の横浜高の後輩の近藤健介(28)に“万感の5球“を投げて与えた四球が23年の日米プロ生活の最後を飾るラスト登板となった。試合後、場内を一周してファンのへの感謝の思いを伝え、最後にマウンドに立ち涙を流した。登板に先立ち行われた引退会見では約1時間、引退を決断した理由と葛藤、栄光と挫折の23年間を語り尽くした。松坂のファンへの引退スピーチは12月4日にメットライフドームで開催されるファン感謝デーで行われる。
最速は118キロで四球
「平成の怪物」「永遠の怪物」…ファンはそんなボードを掲げていた。 桑田真澄に憧れ、エースナンバーとは知らずに「プロでつける」と決めていた背番号「18」を背負った松坂が最後のマウンドへ向かう。登場曲はレッドソックス時代にも使ったことのあるEXILEの「real world」。親交のあるATSUSHIの歌声が流れると9523人のファンが駆け付けたメットライフドームは温かい拍手で包まれた。「最初、グラウンドに出た瞬間のファンの皆さんの拍手に感動しました」 たった一人の対戦には、ボールが抜けてもいいように左打者、しかも、横浜高校の後輩の近藤が立っていた。377試合目。いつもと変わらぬルーティンでセカンド方向からマウンドに入ると、プレートをさっと足で払い、スパイク6歩分の場所にスパイクで印をつける。 そして、大きくワインドアップでふりかぶった。「格好いい」と、こだわり続けた本格派投手の証である。 初球は大きく上へと外れた。スピードガン表示は118キロだった。 「投げたくはなかった。プロのマウンドに立っていい状態ではなかった」 後述する引退の理由となった腕の痺れはまだ残っている。右ヒジに貼られた治療用の絆創膏のようなものが痛々しい。だが、信頼し、愛する多くの人たちから、「最後のユニホーム姿を見たい」との声が届き「すべてをさらけだしたい」と引退試合のマウンドに立った。 23年目の松坂大輔が、その全力投球の118キロに集約されていた。 2球目は外角低めへ。同じく118キロ。ストライクがコールされると場内に拍手が起きた。森友哉とのサイン交換はない。晩年は、「動くボール」を武器にしてきたが、全球ストレート勝負である。3球目は117キロ。ボールが浮く。偉大なる投手の最後を見届けようとする静寂がドームを包み、4球目に116キロの山なりのストレートがまた外れてカウントが3-1となると「大輔。頑張れ!」の思いを込めた拍手が巻き起こった。