「首の葉っぱ」「髪がお散歩や」ダウン症の娘の言葉で創作落語を作る母子の軌跡「娘の質問には地獄の果てまでつき合って」
芸術の分野で活躍されているダウン症の方はたくさんいらっしゃいますけれど、落語や漫才のように言葉を使う分野にはまだ少ないです。日本ダウン症協会の専門家もおっしゃっていますが、話すことが好きなダウン症の人は多いのに、発音のせいでうまく伝わらなくて、辛抱強く聴いてくれる人がいないと「もういいや」と本人が話すことを諦めてしまう。実は、お笑い好きやおしゃべり好きの人が多いんですよ。 ── 聞く側の問題でもあるのですね。
喜美子さん:もちろん話す側の問題もあると思うので、有香も滑舌や発音をよくするための器具を使った口のトレーニングを地道に続けています。落語にしても漫才にしても、お客さまに何を言っているのかが伝わらないと始まらないのでね。1年ほど続けたおかげで口の周囲や舌の筋力が高まり、滑舌がよくなりました。家族3人で詩吟を習って、日本語の正しい発音や発声を教えていただいています。 有香さん:仕事場でも「村上さんの声だけははっきり聞こえる」と言われます。声が通るので「ごはんよー!」と呼ぶと、2階の部屋にいるお父さんにも届きます。
── 有香さん、これからも落語は続けますか。 有香さん:はい!落語はこの場を明るくできるし、世界中のみんなを笑顔に明るくする魔法使いみたいなことができるから。私の夢は、スケジュールを落語で埋め尽くすことです。 PROFILE 村上有香さん むらかみ・ゆか。アマチュア落語家「楽亭ゆかしー」として活動。詩人として、ダウン症の友人・伊藤美憂さんの絵とコラボした詩集『弱いはつよい』(風鳴舎)を出版している。 取材・文/林優子 写真提供/村上喜美子
林優子