ACP(人生会議)って何ですか?
ACPをめぐるモヤモヤした気持ち
国は、ACPの実践を推進しています。2024年度の診療報酬改定では、入院基本料の基準として、「意思決定支援」が記載され、各病院でACPの指針を定めることが求められています。ACPがいい形で広まるきっかけとなればよいのですが、要件を満たすための「形だけのACP」が広まったり、ACPの実施件数だけが評価されたりするのは避けなければいけません。 2024年10月に福岡で開催された日本癌(がん)治療学会では、「人生会議(ACP)~癌治療の現場でどう活かされるか~」というシンポジウムが企画され、私も登壇しました。「ACPは本当に必要なのか?」という演題で、モヤモヤした気持ちも含めて語ってみましたが、意外と共感をもって受け止められたようです。 私のあとには、ACPの第一人者である2人の緩和ケア医(聖隷三方原病院の森雅紀さんと九州がんセンターの大谷弘行さん)が、ACPの最新の研究や、各国の文化に根差したACPのあり方を紹介しつつ、思いを語ってくれました。 「患者さんの意思は揺れ動くもので、それを固定化しようとすべきではない」 「ACPは、将来の豊かなケアのために対話を重ねていくプロセス」 「大切なのは、将来よりも『今』」 私のモヤモヤした気持ちを言葉にしてもらえたようで、ACPの理解がだいぶ進みました。
「医療は人間の幸せのためにある」
「ACP(人生会議)って何ですか?」という質問に対して、すっきりとした回答ができず、申し訳ないですが、医療現場でも見解が揺れているのはご理解いただけたかと思います。 議論が混乱しているとき、私が立ち返るのは、「医療は人間の幸せのためにある」という原則です。ACPの議論がどうであれ、この原則が揺らぐことはありません。 患者さんには、診察室で、自分の希望や価値観を語っていただきたいと思います。大切にしたいこと、気がかりなこと、好きなこと、嫌いなこと、やりたいこと、やりたくないこと……。そんな「語り合い」が医療の原点であり、私の考えるACPです。